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ナースセンターへ戻ると、受け付けカウンターの前に立っているお見舞いらしからぬ格好の二人組が目に留まった。
一人はトレンチコートに身を纏い、立てた襟の端から三角の顎髭が覗いている四十代後半位だろうか。凛とした眉が特徴的だ。
もう一人はスーツ姿の女性だ。白く大きな襟のシャツは胸元にフリルが着いている。
受付嬢の話しを、小さな手帳に書き込んでた。警察だろうか。でも制服を着ていない。
彼らが帰ったあと、受付嬢のトキさんにそれとなく聞いてみた。
「トキさぁん。さっきの人たちは何だったんですか?」
「深雪ちゃん、ちょっと聞いてよ。さっきの人たち刑事さんなのよ。殿方のほう見た? 私、もっとちゃんと化粧してくれば良かった。今朝に限って手抜きしちゃったのよぉ」
彼女によると、彼らは警察で、最近この病院で発生している連続変死について調査している刑事らしい。
「例の事件はまだ、犯人捕まってないんですよね。私怖いです」
「そうね。若い子ばかり狙ってるみたいだから、私は大丈夫だけど。深雪ちゃんは気を付けなきゃダメよ」
「はい」
気を付けるっていっても、どうすればいいのかな。
「あぁ……私も狙われたら、まだ若いってことになるのかしら」
トキさんは、独り言のように呟き、受付けの椅子へ戻って行った。
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