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# 自覚
中に入ると天井にパイプが何本も走っているのが目につく…速川が上手くパイプに飛びついて敵の顔面に飛び込む…
やっぱり、綺麗なんだよな…
つい見惚れてしまう。
春輝が重心がしっかりしてるって言っていたが、
それが空中でもわかる。
柔らかくてしなやかに舞ってるような…
速川が俺にバレエと体操だったかをしてたって言ってたからな…結構最近までしてたのか?
それとも…未だにやってるんだろうか…
「オラァッ!!!!」
それとは、真逆のブレブレなパワーで
ゴギッと嫌な音を立てながら向かって行く忠犬。
人間が2、3人吹き飛ぶ…
荒くて破天荒。
「ワゥ〜、すげぇ弱チョロ」
「チッ…忠犬てめぇ…こっちに飛んできてんだよ」
「はは、すまん」
そう言うが2人の息はぴったりだった、
上手くお互いの獲物には手を出さないように配慮してるような…
交互にすれ違う時も擦れ擦れで当たらない。
ーーー 幼馴染。
…俺と理人も、あんな風に…なってた?
…ふと思い出すと記憶が曖昧だ。
…どうやってたんだっけ…
「封牙!!!!」
「えっ」
急に鉄パイプが横切る…雅人か!!
…俺に1人向かって来たやつをパイプで打ちのめして、さらに蹴り飛ばし気絶させていた。
「どうしたの?…封牙」
「……いや…」
なんで…だ?役に立ちたいって思ってたのに、
急に手が震えていた。
…ーーー暴走したら、誰が止めてくれるんだ?
春輝は今ここには居ない。
迷惑…かける?
俺…
「おぃ!!!封牙!!!…」
急に速川が俺に掴みかかった。
「全員で生きて帰るんだよ!!闘え!!!!」
ッーーー…!!
その声に
震えていた手が止まる。
速川……
速川がくれる言葉は
俺にいつも直接響いてくるんだよな……
「……呼んでいい」
「ん?」
それは突然だった、俺に耳元で「雷って呼んで」と言って肩を叩いたかと思うと再び男達に飛び込んでいく。
…あぁ、もう…
ーーー 「好き」
この気持ち、
どうなんだろうかって自分の中で何回も悩んでた。
でも話せば話すほどに、
速川の全部が好きになってた。
認めるしかなかった。
……
本人にも…
直接それとなく告げてるし…
報われないのは解ってる。
速川は春輝が好きだから…
雷には…想う人がいるから…
勝てないのは仕方ないよ。
…でも、嘘じゃない。
この気持ちは…
嘘じゃない。
雷に失望されるのも、見放されるのも、
喧嘩するのも、離れるのも嫌なんだ。
「雷!!!!」
「??」
俺が男達に向かって殴りかかると上手く雷が俺の肩に手をついてふわっと地面に降り立った。
「やれるよ」
「あぁ」
雷が優しく俺に笑いかけて拳を合わせようとするから、合わせて乾杯するように、軽く打ち合わせた。
…
思い返せば暴走した後…
俺は空腹もあったし、身体中傷だらけで、
精神状態も少し不安定だった。
言われるがままに家にきたが、
部屋で寝たきりみたいに過ごしていた……
つい昨日のことの記憶が曖昧になりそうなぐらいで、朝から眩しい朝日に目が眩んだ…
そんな矢先に
「封牙?気持ち少し落ち着いたら話せる?
ちょっと話したいんだけど。」
と春輝に声をかけられた。
「ん…おはよ…春輝…
勿論…俺も話したい
先にお礼言わせて…
昨日は俺を止めてくれて、
助けてくれて本当にありがとう
春輝がいなかったら、
他の2人も巻き込んでたと思うし、
本当に助かった…」
春輝は俺のベッドの横に座り笑いかけてくる。
「おはよ。
まぁ、そんなもんでしょ。
中々みんな話そうとしたらタイミング無かったりとかさ…
後回しになっちゃったりするし、
俺自分の事で手一杯だったから…
封牙がこうなるとは思わなかった…
話遅くなってごめんな…
速川とは話せた?
…色々あって…
アイツのことも話しときたいけど…
封牙は、
……理人と…話す気ないの?
あと、お礼言われることしてねぇから気にすんな。」
「いや、春輝だって春輝でやることはあるだろうし、忙しいと思うし、
春輝が謝る事一つもないよ…
速川とは昨日話せたよ…
俺達を陥れようとしてたって聞いたけど、
俺はそんな風には思わなかったし、
むしろ助けられてた…
だから…今回のことはあんまり責めないでやって欲しい…
今は…話す気はない…
もう傷つけたくない…
離れたい…」
「そっか…、
でも話すって言ったの忘れてたじゃん?
それは俺が悪いよ…
…つか、2人で話し合ったのかと思ってたんだよな。
…学校行ってなかったせいで、
大分溝できてたなぁ…
…別に、封牙が速川と仲良くしてくれんのは全然嬉しいし。
寧ろアイツ友達少ないから嬉しいんじゃねぇかな…
ここ最近、出かけるとき楽しそうだったからさ。」
まぁ、2人のことあんまり関与しないけどさ?
封牙が後悔しない選択で理人と向き合えよ?
俺に出来ることはしてやるから、
話してよ。
ちゃんと。」
「うん…
知りたくて…理人に聞いたりしたんだけど…
何も話してくれなくて…
そこから俺も、
もういいやってなっちゃったんだよな…
もっと上手く話せば良かったとも今更ながら思ったりもした…
でも俺春輝みたいに人と話すの上手くないし、
結局は同じようになってたかもしれない…
速川といるのは楽しいし、
助かってるから、
これからも仲良くしたいと思ってる…
友達少ないのか…そんな感じしなかったけどな…
なんか、人と壁を作ってるような感じはしたけど…
うん…ありがとう
話すよ…ちゃんと」
そうやって話をしてから、
絢世を紹介されたり他のメンバーにも会ったり…
正式なのかわからないが、
だんだんとチーム内に馴染んできていた。
…不思議と居心地がいい。
春輝が集めたからっていうのもあるのかもしれないけど…
話した感じは、
悪い奴がいるようには思えなかった。
でも特別、速川とは毎日のように話をしたり
遊んだりしている。
騙そうとしたなんて言っていたけれど、
最初にあった時と今と何も変わらない。
速川は速川で…
一緒に居ると楽しくて…
「封牙、今日はありがとな…
俺となんやかんや話してくれるの……
もう嫌になってないか、
心配だったけど、
楽しそうで安心した。
これからもよろしく…?
とりあえずウチ帰るかぁ…
同じ方向に帰るってなんかいいよな…俺シェアハウス気に入ってんだよね♬」
なんて、
買い物に出た時に言われる。
そうか、これからは殆どみんなと一緒か…
「こっちこそ、
買い物とか付き合ってくれてありがと
俺は速川に陥れられたとは思ってない
し、むしろ助けられてた…から気にしてないよ…
うん…速川と同じとこに帰るってなんか変な感じするけど、これからも宜しく…!」
春輝の集めたシェアハウスメンバーは、
それぞれ部屋が与えられている。
家具とか服とか買い物して自由に自分の好きなようにできるし…
料理をするのとか、
風呂に入るとか、
順番でも一緒にやるんでも…
ある程度は当番制でやってるみたいだが、
みんな楽しげにやっていてシェアハウスなんてする気は無かったが案外見ていて悪くないなぁと思った。
馴染もうと思えばすぐ馴染めるような気がする。
…速川はいろんな話をしてくれた。
「普通に接するってよくわかんなくて…
なんか悪いことしてたら教えて?
直せるとこは直すし…」
なんて不安そうに言われたが…
ありのままで良いと思った…
真面目すぎるぐらいだなって思ってたんだけど。
どうやら虐められていたのが原因か…
なら仕方ないのかな…?
…髪色はセルフでやっているからマダラな色になってるとか…
そんなことを言っていたが…
全然綺麗というか…
寧ろ好きな感じの色で…
徐に触れると恥ずかしそうにしていて、
そんな顔もつい、
じっと見つめてしまっていた。
動物も会話ができないから苦手だとか、
なんか面白いなぁって話していて思ったし…
終始笑ってた気がする…
また休みの日に買い物に一緒に行く約束をしたし、
速川と話すのが楽しくて仕方なかった。
…それでいて、
「……帰る?…それとも…
………なんて。」
と、悪戯気味にホテルに誘われたから、
「…いいよ…いこ」
なんて笑いながら手を引っ張ってみる。
「ッ、まっ…今日は帰ってもいいんだけどね!?」
と家の方に向かおうとするから、
「なんだよ、速川から言ったんじゃん〜
急に恥ずかしくなっちゃったの?」
と後ろから両腕で引き止めて、
顔を覗き込んで様子を伺ってみる…
ホテル行きたくないのかな?
体を重ねる関係からだったから、
悩んでんのかな…
「ちょっ…と!!
そーいうのだよ!!!!
どんな反応したら、いいのかわかんねぇから//
…俺とほとんど一緒にいるじゃん?…
他に友達とか…いるんじゃないの?
……俺は、夜誘われても今のところ封牙といるし断ってんだけどさ………
…というか、なんかわかんない…
封牙といたいのかも…// 」
優しく笑いかけられて、
抱きしめた手にそっと触れられた。
なん…だよ、その顔…
優しく笑いかけるのは反則だ…
「うーん…いないわけではないけど、
学校でも家でもほとんど、理人…といたし…
今、一緒に居て楽しいのは速川だから…
…っ!?///」
“なんか…少し…胸が締め付けられる感じがする…なんだ…これ…???"
「速川がいいなら、俺も一緒に居たい…な…//」
さっきまで自信満々だったけど
目を合わせるのがなんか恥ずかしい…
心臓がうるさいな…
「赤くなるなよ、恥ずかしくなるから…//」
「だって…//
速川だって赤いくせに…っていうかなんか、
胸の辺りが…
まだ話途中なのに速川は俺のフードを引っ張って顔を隠し気味にして「じゃあ、行こう?」と嬉しそうにフードの端で周りから見えないように
顔を隠したままキスをされ、微笑まれた…
驚いて口元を隠して2歩下がり、
「なっおま…ここ道だぞ??!
…くそっ…覚えてろ…」
ムッとしながらも嬉しそうに笑い返す事しかできなかった。
…
楽しげに話しながらホテルに向かう。
普通に女の子と付き合ったりしたことないわけ??
…なんて速川に言われたが…
付き合うという行為に魅力を感じてなかった。
正直いうと女の子って苦手だし、
付き合ったこともない…
というか全部断ってきた…
自然と避けちゃうんだよな…
友達とかなら全然、遊べるし仲良くなれるんだけど、恋愛に発展するとわかんなくなる…
…え、じゃあ…あれか?
…キスは…したことあったよな…
セックスはした事なかった?
…初が男で良かった?の?
なんて驚くように聞かれた…
そうか、
思い返すと女の子とそういうことをするまでは
してなかった。
恋愛についても速川から不意に話される…
“なんだろう、俺が言うのもだけど…
なんか常にこう…
そいつのことで頭ん中いっぱいになるし…
誰かと居るの見たらムカムカして……
いろいろやってあげたかったりとか…
とにかく好きだなってなる感じ…?
…胸がこう、苦しいみたいな…
ドキドキしたり…//”
そうだ、つい忘れそうになるんだけど
速川は春輝が好きなんだよな…
ドキドキする…か…
自分の胸のあたりに触れて考えた。
キスは女子ともあったけど
セックスは速川が初めて…だった…
男と寝る素質があったのかもと言われ、
そうかもしれないと…思うけど…
なんか…違う
考えてみたら“速川”だから。
この時はあやふやだったけど速川だから俺は今こうやっていられるだけで、
他のやつとやるのかと考えると
全くイメージが湧かなかった。
できる奴もいるかもしれないけど……
「ねぇ…キスしても良いよね」
そうやって、ホテルのドアを閉めて、
両手で頬に触れぐいっと近づけキスをした。
…速川と…
こうやることが…
今凄く俺には癒しだった。
幸せだった。
“いくらでも、はじめてあげるけど?”
なんて速川の口から出てまた嬉しくなる自分もいるし、俺も…速川になら…
はじめてとか…経験したい…
教えてほしい…
…へへ
速川が風呂場に入るのを確認してから、
ベッドにうつ伏せで倒れ込んだ。
「〜っ!!!///
なんで…恋愛って…わっかんね…
胸が苦しいって…
一旦考えんのやめよ…」
冷蔵庫からペットボトルの水を出し、
火照ったほっぺに当てて冷やした…
……
風呂から上がってくる速川の白くて綺麗な肌。
濡れた髪、優しい匂い…
キスしたくて、
たまらなくなる…
水が欲しいからとってと言われ
口移しで水を飲ませた…
唇から溢れる水も、
溢れて肌を伝う水も、
潤んだ目が…
キスを強請る声が…
甘くて、気持ちよくて…
可愛くて仕方なくて……
俺の体を優しく丁寧に触れて、
やってくれてる最中、何度も心臓がうるさくて。
恥ずかしいのに幸せで。
…こんな満たされた気持ちになるんだ…
…って…
何回も何回も、速川にありがとうって思ってた。
与えられてばっかりも嫌だからって…
速川に良くなってもらいたくて頑張ってみたけど、
中々最初は上手くいかなくて…
もどかしかったなぁ…
…普段話してるときは、全然目を合わせない癖に
…セックスの時はヤケに強気になって、
…俺に強く視線を向けてくるのも…
…やってあげると可愛く鳴くとこも…
…なんかもう、全部が…
……多分…だいぶ前から…
好きになっていってた……
…特に…
…どうしようもなく…
…
……あの朝の日に…
…誰にも渡したくないって思ったんだと思う…
「ん…、朝か…何時だ?」
薄暗い中、
手を伸ばして携帯を探す速川が目につく。
「ん…おはよ速川
今日は俺の方が早かったな」
隣で携帯をいじっていたが、
速川が起きたのを見てニコッと笑いかけてみた。
「はよ…
…なんかちょっと上手く寝れなくて…」
珍しく弱気な顔で笑って枕に伏せて口元を隠している。
…どうしたんだろう?
「買い物行こ。
お腹すかない?」
小さな声で弱々しく言ってくる。
「大丈夫か?
無理はすんなよ…??」
少し心配そうな顔をしながら頭をぽんぽんと、
優しく撫でてみると、
「ん…」
と、まだ眠いのかちょっと不攻め気味にうなづいている…
…とりあえず家具見に行くなら、丁度いい時間だしバイクで抜けてそっちまで行こ。
飯食べるとこ色々あったはずだし…
なんて、無理矢理起き上がって服を着ながら伸びをする速川を心配しながら目で追った。
ふぁ…と、欠伸が出て、うとうとしている…
「まだ眠いんじゃない?
いいよ、買い物はいつでも行けるし
もう少し寝たら?」
自分も服を着ながら見つめていると、
意外な返事が来た。
「あー…本当は朝、ちょっと苦手で…大分封牙に気を許してるみたい気をつける…」
服のボタン止めながら話してくれるが…
ボタン…掛け間違えてる?な?
「だから、なるべく人より早くおきたいんだけどね…今日、遅くなったから…
小さめにアラームかけて、
早めに起きるようにしてんの…
耳よくてさ、それで起きれる…
平気。
少ししたら、
目覚めるだろうから…」
「そうなんだ
いつも早いから、早起きなのかと思ってた
いいよ、俺の時はゆっくりで
…ボタン掛け違えてるよ」
速川に近づいてシャツに触れボタンをかけ直す。
「…ん…ごめ…」とされるがままボタン掛け直されてる姿が凄く可愛くて微笑ましい。
「寝起きの速川…可愛いな…
早起きしたくなっちゃう」
おでこをコツンと擦り合わせながら、
今からやりたくなる気持ちを抑え
「顔洗ってくるね」
なんて、速川の頬を少し撫でてから、
洗面台に向かう…
「封牙まって…」
洗面台に向かう前に手を取り、
速川が急にキスをしてきた…
「したくなっちゃった//」
と俺の肩に頭乗せて小声で呟いてくる。
「ん?…っ!!//
ねぇ…俺我慢してたのに…知らないよ?」
これは…心臓の音が速くなる…
あぁ… “可愛い” …
速川の顔を自分の方にぐいっとむけて、
少し深めにキスをするとそれに応えてくる。
「いいよ、俺あんま動けないし…
昨日なんか逃げるようにしちゃったから、
好きにやって…//」
前日の夜…
速川は途中で怖かったのか、
俺にやらせてくれなかった…
もしかして、それで悩んで寝れなかったのか?
「ん……嫌だったら…ちゃんと言ってね
っは……雷……って呼んでも…いい…?」
首筋にキスをしたり、
甘噛みしたりしながら真剣に速川を見つめた…
「ん…♡
…雷?…呼びづらくない…?
みんな速川だし…はや…かわ…でっ…いいよ//」
甘噛みされてるのに気持ちいいのか、
だんだん顔が赤くなるのが可愛い…
もっと甘えてほしい…な…
「速川より短いし、
よびにくくはないけどなぁ…
嫌だったら諦める」
服に手を入れて、
腰から胸元を優しく撫でてみた。
「ほんとに…続きしちゃって…
いいの…?また今度…でもいいよ…?
無理させたくないし…」
また拒絶されてもな、と…一旦手を止めた。
「……ん…して、欲しい…昨日考え過ぎてやらないと…俺封牙と向き合える気しないから…
激しくして…封牙…
好きにして//
…俺こんな…だけど…封牙がしたいなら…好きにして欲しい」
手を伸ばしてぎゅっと抱きしめられた。
可愛い…
こんな…甘えてくるなら…
朝…いつも一緒にいられたら…
「そっか…
あんまり煽んないで…欲しいな…
我慢できなくなる…っ///」
抱きしめ返してから、
首元を少し強めに噛んで、ベッドに押し倒す…
「嫌だったら…強めに突き放していいから…
じゃないと…やめられない気がする…」
「我慢してんだ?
……しないでいいよ、今なら別に…平気そうだから//
来て、封牙♡」
甘い声で誘いながら自分から脱ぐようにしてくる…
これは…我慢できないな…
噛み癖で速川の身体に跡をたくさんつけた。
めちゃくちゃにしたくて…
気持ちよくさせたくて…
こんな強気な自分も、
ドキドキが止まんなくて…
もっと可愛く鳴かせたい…
声が聞きたい…
泣きながら「気持ちいい」って俺の手に馴染んでいく姿が…
たまらなくなる…
…
色っぽい声も、
思わずイッちゃう姿も…
ダメとかイヤとか言われても、
照れた顔も…
真っ赤顔で全部否定されても…
止まらなかった…
見たくてしょうがないんだ…
速川…ーーー
“…とりあえず、
今日の事は忘れろ……///”
恥ずかしげに目を逸らして言われたが、
忘れられる筈がなかった…
…
…っ…可愛すぎ…だろ…///
トイレに座り込んで、手で顔を覆った。
っふ…///…っっ…ん///
行為中の速川の顔を思い返しながら、
自分のを扱くが…
少し…足りない…
慣れない手つきで、
舐めた指を後ろにゆっくり挿れる…
こっちまで…自分で弄るなんて…な
ん……ぁ…
んん…//っふぁ……はや…かわっ…///っく…
っ〜〜〜!/////
仰け反りながら射精して…
はぁ…はぁ…///
なんか…恥ず…っ…//
と余韻に浸りながら、
顔を腕で覆った…
あぁ…
中に…欲しい…
速川の……
コンコンッとトイレの戸を叩かれ…
「なぁ、平気??
…俺やっぱやったほうが良かった……
悪いなんか………封牙に甘えすぎた?…よな…」
不安げに話しかけられ、焦った。
…前にネットで男同士がやるのをみて、
アレを中に入れるのは知ってる…
何でやらないのか…ちょっと気にはなっていた…
でも…何かあるから…
…だとは思う…
いや、でももう…こんなに…
欲しくてしょうがない//
「…っ!!!」
扉を叩く音にビクッと驚いてから、
「…っ大丈夫…もう出るから…
先準備…してて…っ」
と少し焦りながら、手を洗った…
「…ふーーー…っ…よし」
落ち着こうと、深呼吸をしてからトイレを出る…
このままじゃ、
どんどん自分の気持ちが苦しくなる…
…速川に惹かれてばっかで…
…速川は俺のこと…
…
……もしかして、俺にされてるの想像して抜いたりしてたりして♬
それはホテルから出て買い物に行く前に突然言われたことだった。
調子が良くなってきたのか降りていくエレベーターで冗談気味に速川は言って笑っている。
「っ/////…そう…だよ…
やったの…速川しか…いないんだから…仕方ねぇだろ…」
顔を腕で隠しそっぽを向いて、
ちゃんと真面目に返した…
嘘をつかないで向き合ってくれるから、
…恥ずかしいけど…言うしかない…
「はぁ!?!?///
…お前…理………、いや…
んだよ…それ…//」
何故か軽く蹴り飛ばされ、ホテルを出た…
「……何でお前がフリーなのか、
…全然わかんねぇ…」
速川がそう言ってバイクを動かしながらマックに向かう道に出ていく。
朝は軽くマックでもしようという話から
2人でマックに移動するとこだ。
「…??いてっ…なんで蹴るんだよ…え?フリーって?ちょ…待ってよー」
困惑しながら速川の後をついていく…
「フリー…って、何でお前が誰とも付き合ったりしてないのか不思議ってこと…
モテるんじゃ無い?
…封牙って、尽くすタイプでしょ?」
………不意に立ち止まって
「もしかして、俺にだけってことない…よね??」
と首を傾げたあと歩き出しながら少し切なそうに
「俺意外と…やってみても…いいのかもね…」
なんて目も合わさずに小さく言われた。
「あーフリーってそういうことか…
うーん…モテるかどうかは知らないけど…
まぁ、大事にしたい人は出来るだけ喜ぶことをしたい…かな…
いきなり立ち止まんなよ…」
速川にぶつかりそうになって、
少し後ろによろけたが、話を続ける…
「今ああいうことしてるのは…速川だけ…だよ…
え?おかしかった…?
嫌…だよ………
というか俺、知らない人に、
あんまり頭とか身体触られるの……
嫌…なんだよね…」
俯いて歩くペースを落としながらも
速川の後をついていく…
「なにそれ、
俺だけでいいみたいに聞こえるんだけど…?
告白かよ。」
笑いながらマックの駐車場にバイクを止める速川…
“告白”
そう言われて胸が張り裂けそうだった。
「告白じゃ…ねぇよ…//」
少し照れながら目を逸らすが、
こっちを見てる様子がなくて少し寂しくなる。
「俺のこともうそんな信頼してくれてんの?……
優しいよ…
封牙ってさ……
ちゃんとお前のこと知ってくれたら…
みんな好きになんじゃない?
俺いつの間にか、
春輝への気持ち忘れそうになるし…
そういうとこ…
いいと思うよ?
俺は封牙のそういうとこ結構気に入ってる。」
楽しそうに笑いながら
何事もないようにマックの中に入っていくので速川の後ろをついていく。
「まだ朝マックの時間?
…俺ハッシュドポテト好きなんだよね…
…2個にしよ♬」
「こういうことすんのは…
速川がいい…かな…
速川が…嫌じゃなければ…だけど
優しい…か…速川も優しいだろ?
やってもらったことは…返したいっていうのかな…
みんなかどうかはわからねぇけど、
シェアハウスしてる人とはもっと仲良くなっていけたらいいなって思ってる
…
なんか…よくわからねぇけど、
速川は、ちょっと別…??
もっと喜ばせたいって…
気持ちがあるんだよなぁ…
あ、俺もハッシュドポテト食べたい!
あとナゲット」
「今更嫌なんて言うかよ…
封牙とやるの気持ちいいから自信持っていいよ?
…うまくないやつは、マジで痛かったりするし…
封牙は思った以上に激しくて…」
一瞬間があってから聞こえないくらい小さい声で
「そこが…好き」
なんて俺に囁いてきた。
“好き”なんて簡単に言うなよ…
そう言ってから声のトーン戻して
「告白されたら、いいよとか言っちゃいそうだもんな。」
笑いながら冗談気味に言われて、
駄目だ、それは…正直…
冗談だったらキツい…
「俺実はあんまり…
仲良くなれてねぇんだよ…
みんなと。
揶揄われたりはしてるけど、
たまにそれに嫌な気分になったら大体春輝が声かけてくれんのね…
やっぱ凄いんだよなぁ…//」
…あ…
さっきまでとは空気が変わった…
春輝…
何かとその名前が出ると嫌な気持ちになる。
なんなんだろう、、
やっぱこれ、嫉妬か?
わかんなかったけど…
そうなんだよな…
速川がその後、
料理を作ることが好きだったり、
席は正面に来るよりカウンターで隣がいいとか、
苦手なものを伝えると
美味しい食べ方教えてあげるなんて
何かを思いついたのか嬉しげな顔をしていたりした。
なのに…
駄目だ飯の味がわからない。
速川の口から“春輝”って言われるたびに思考が飛んでるしドロドロした気持ちが溜まる。
あぁ…嫌だなぁ…
何となくしか話を聞いてなかったが、
不意に速川がそこから引き戻してきた。
「…なぁ…
そういう顔して欲しくない…
…不満があるなら言ってよ、直すから。
…不安なんだよ俺、
…友達とかわかんないから。」
…あ、まずい……
…言ってみるか…
「うん…隠し事は、しないようにするよ…
もっと、速川とは仲良くなりたいし…
同じことにはなりたくないし、したくない…
ん……顔…?あぁ…これは…俺も…よく分かんないんだけど…
なんか、速川が嬉しそうに春輝の話してるの見てると…なんだろ…なんかモヤッとする??
いや、速川が春輝のこと好きなの知ってるし、
理解してるんだけど…
うーん…やっぱなんでなのか分かんないや…
嫌な顔してたならごめんな…?」
手を速川の頭に伸ばそうとして、やめる…
触れられ過ぎるのも苦手そうだから…
不意に速川が食べる手を止めた。
「……ん?
…春輝の話…されるのが嫌?
って…こと…?
……それ///
や、…まって…ちょっと…
なんか…」
思わずそっぽを向いて速川が何かを思ってるみたいだが…
「…??え?なに??
速川なんでか分かるの??教えてよ…」
速川の反応に驚いて、肩を掴んで軽く揺さぶった。
「いや……
俺がそうなるのって、
さっきも言ったけど…
みんなが春輝と仲良くしてるとなんかモヤモヤするわけ。
……封牙がそれに近い気持ちだったら、
まるで俺のこと好きみたいじゃん?
…そんな、あり得ないことを
考えちゃっただけ//
好いてくれてるなら
嬉しいけどね…?」
嬉しげに笑いながら、不意に目が合う。
「え……え?//
俺が…?速川のこと…??
……
好きだよ…」
いつも意地悪されるし、耳元でコソッと言ってみた
「って言ったら??」
耳元から離れて少し真剣な顔で見つめてから
「なんてね…」
ベッと舌を出して悪戯っぽく笑いかけて、
僅かに残るポテトを食べていく。
"あぶな…"
もう自覚してる…いや、今自覚した…
…凄い好きじゃん…ーーー
「……ッ?!//
冗談でそういうのやめろよ!
本気にするからさ!??
…好きなやつにそういうのやれよ!!!
……//」
思わず口を押さえて
「クソ、声デカくなったじゃん//」
と不貞腐れながら頬を膨らます姿…
あぁ、可愛いんだよなぁ…
「冗談…ね」
聞こえないくらい小さい声でボソッと溢した、
「ハハごめんごめん…
好きなやついないからなぁ…」
不貞腐れた速川を見て、声を出して笑いながら言ったが…嘘…ついてる…つきたくないけど、
つくしかない…
「ふーん…
好きなやつ…
見つかるといいね?」
……
……
さ、そろそろ行く?
家具見に行こうよ。
なんて、速川が言ってから立ち上がった。
「もう…もしかしたら、
見つかってるの…かも…だけど…」
小さめに言って、
最後のナゲットを口に放り込む…
でもその小さな声すら速川は耳がいいって言ってたから聞こえたのか…
「そうだよな?
……正直さ、俺は封牙が理人を好きなんだと思ってて…
言いづらかっただろ?
…でも俺は、封牙のこと応援してるからさ。
俺のことは気にすんなよ!?
ちゃんと封牙の背中押してやるからさ。」
トンッと背中を叩いてマックを後にされた。
理人ーーー?
…なんで、いま…理人?
…???
「…!?
ちょ、ちょっとまって…!
……俺、別に理人のこと好きなわけじゃないよ?
気にしたことなかったし…」
一瞬立ち止まってしまった。
なんかいろいろすれ違ってたのが合致する。
速川は俺が理人を好きだと思って遠慮して?た?
速川の後に付いてマックを出たところで、
速川の手を掴んで引き止める…
「それに…さっきの…好きな人…って言うのも…
理人じゃないし…」
手を掴んだまま、ちょっと俯き加減で、
ボソボソと言った…
やばい、緊張…する…
なんだよこれ…
「…………え?
おい…、!!嘘だよな…、???
じゃあ何で…?
…俺…無意味なことして……る?
………お前……だって、
理人のこと考えて俺とやってみるかって聞いたら…
良さそうにしてたじゃん?!
…好きなんじゃないの?
……うわ.…勘違いかよ…
凄い…今まで…
遠慮して……
お互い好きだから遠回りしてるように見えて…
だから俺が利用してやろうって……
けしかけた…わけで…」
急に速川の顔が真っ赤になってきて掴まれてない方の手で顔を隠すと
「馬鹿……じゃん…俺…」
と空回りしてる事を悔いてる姿に、
顔が暑くなる……
速川…
かわ…いい…こんな状況なのに
そんな風に思っていた。
「なんだ、他にいい人いんのかよ……友達?
…だったら、
俺とばっか居ちゃ駄目じゃね?
…とは言っても俺も人のこと言えないんだけどさ……
ま、
俺は応援してるから。
ほら、乗るぞ?」
ヘルメットを渡してきて優しく笑いかけてくる。
……こっちの、気も、しらないで…ッ
「…嘘じゃないよ?
小さい頃から仲良かったし…好き…だけどそれは友達としての…好きだし…
遠慮…
あー…なるほど…ね…
…勘違いだったってことだな…
って言っても…まだ、普通に友達…?だと思うし
好き…なのかもわからねぇし…
いいんだよ…というか…は…
…なんでもない!
お互い様ってことにしとこ…!
ん、ありがと」
ヘルメットをかぶって、後ろに座った。
ムカつく、凄いイライラしてくる。
「鈍感なの…俺だけじゃないんじゃん?」
バイクエンジン音に隠れるように呟いた、
すると速川はバイクのエンジンを切って…
「なに?今何つった??
…悪いと思ってるよ…?
……凄い勝手にいろいろしようとして…、
でも途中でやめようとしたのも事実だし…
けど…何だよ…
なんでもないって遠慮されるの1番嫌なんだけど…
…
……はぁ…喧嘩になりそうだし、やめとくか…
別に封牙と喧嘩したいわけじゃないから。
でも、そうやって隠されんの…
封牙が理人にされてた事と同じだって気づいた方がいいよ?
俺結構傷ついてるからね?」
そう言われてハッとした…
…嘘ついて苦しくて…
こんな風に言われて…
この気持ちを隠す必要あんのかな…
悲しげな目で速川は笑って、
「……行きますか…」
と再びバイクを動かし始められたが、
構わず言葉を続けた。
「っ……
そっか…遠慮…になっちゃうのか…
…!!…おんなじ事…
まっ…まって……ごめん…
無意識だったとはいえ…俺が1番…
して欲しくないこと…速川にしてた…
ほんとごめん…」
やばい、口が…喉が渇く…
速川の背中の服を両手でギュッっと掴みながら、
少し震えた声で…
「さっき…言えなかった…のは…
まだ…分からないし…
そうって決まったわけでもないし…
…もしかしたら…
俺…速川の事が…
す…好きかもしれない…って……こと…
隠すつもりじゃ無かったんだけど…
まだ自分の中でも…よく分かんないし…
モヤモヤするし…なんか…ごめん…
困るよな…?速川は春輝が好きなんだし…」
背中を掴んだまま、
悲しそうな困ったような顔で精一杯笑ってみる。
…はぁ…言っちゃったな…
「へぇ!??!///」
急に間の抜けた声を出して真っ赤になる速川が
あまりにまた可愛いから緊張がほぐれる。
「んだよ、……冗談でさっき言ったのかと思って//
ちょーっとまて、、、考える…
走ってから…向こう着くまでに考え纏めるから…
先、、移動…///!!!」
慌ててバックした後バイクを走らせる、
速川にぎゅっと後ろから捕まった。
聞いて…こんなに俺の心臓…速く動いてんだ…//
その間無言で走行したのちに
ホームセンターに到着した。
「降りて、止めるからバイク…」
言われるがままバイクから降りてヘルメットを渡す。
「…好きなのは…別にいい…困らないよ//?
でも…俺…好きになってもらったりとか告白とか…
された事ないから、
すっごく…嬉しい…し?//
…えっと …わかんないなら、
これから考えよう…
一緒にいるって約束したんだし?///
…改めると恥ずいな…
……封牙が俺を本当に好きなんだって思ったら…
ちゃんと…また言って…?
…考えるからさ//
封牙とのことも…
…って答えで…良かった?//」
赤らみながら自分の首筋に手を当てて
優しく笑って言ってくれる。
…凄い、、優しい返事が俺をまたより一層、
速川のこと好きだなって思わせる…
「困らない…なら良かった
告白に…なっちゃうのかな…これ…」
照れながら頭をガシガシっと掻いて少し俯いた。
「うん…今までのまま、
一緒にいてくれれば、全然それでいいよ…
ありがとう//」
嬉しそうに笑って入り口の方へ向かう
行こ…!!
と、速川の袖を軽く引っ張った…
「まって、封牙…こっち//」
手をとってエレベーターに乗り込み
誰も居ない事を確認して監視カメラから見えないような位置で軽くキスをされた。
「ん…ありがと…ね?//
これからもよろしく?」
エレベーターが階に到着して何事も無かったかのように降りて
何から見る?戸棚?なんて…
嬉しそうに笑って速川は前を歩き出す…
少し驚いたけど…
な…おま…本当に…
くそ…っ///
顔を赤くして、隠すようにフードを深くかぶって速川の後にエレベーターを降りた…
はぁ……
ため息をつきながらも、
嬉しそうに速川の後に着いていった。
……
…雷と一緒に出会ってからまだそんな時間経ってないけど…
いろんな話をした…
運命なんか信じてないけど…
何かに引き寄せられたのかなって思うくらいに、
不思議と惹かれてる…
悔しいくらいに、
自分らしいのに、
自分が自分じゃなくなるみたいで…
………
…
俺が大好きで大切な人 …
ずっとそばにいられたら …
…
「はぁーーー…大分減ったね…」
雅人の声に周りを見渡した。
大量に倒れる人…
これ、4人でやったのか……凄くねぇか?
…なんて変な自信がつきそうだ…
「チッ…」
忠犬が俺の背後に来て盾になるように、
向かって来た男を蹴り飛ばす。
「封牙、走れ」
「は?」
「行け!!」
「お、おぉ?!?」
忠犬がいきなり背中をドンッと叩くように押すから、そのまま前に向かって走る…
そのタイミングに合わせて一緒に忠犬は駆け抜けた。
「扉を蹴破るぞーーーッ」
「ま、マジッ!?かッ!」
仕方ない、やるしかない。
ガンッーーーーーー
と強く衝撃がきて、扉が凹むのと、奥に倒れる。
出来た!
一発…気持ちがいい…!!!
「シャァ!進むぞ」
「あぁ!!!!」
俺たちの後ろから雷と雅人が走って着いてくる。
それを数人の男が追いかけてくるが、
上手いこと全員の速さなら追いつかないのか、
分散した…
「来い!雅人」
「あいよ!」
忠犬が急に立ち止まり、肩に雅人を乗せ違う部屋に入り込んだ。
「えっちょ!?」
俺が忠犬と同じ部屋に入ろうとしたが、
速川は真っ直ぐに俺を前に走らせる。
「あの部屋と同じ、甘ったるい匂いがする場所…分かるならそこまで走れ」
「は?え?」
「前に封牙、鼻が効くっていったよな?力貸して」
「わかった!」
…気持ち悪いぐらいに甘いあの香り…
“BLACK OUT”だったっけ…
最近出回ってるドラッグ…
理人もやられたやつだよね…
雷は…、関与していたのかとか聞くの忘れてたな
……あの時、どんな関わりだったんだろう。
知りたい、もっと…
雷のこと…
「あの部屋!!!」
ちょうど突き当たりの鉄扉から甘い匂いがして、
手をかけるがびくともしない…
ダメか…
さっきの忠犬ぐらい…力があれば…
ガンッガンッと俺が何回か扉に向かっていくと雷に止められた。
「血が出てる、…もういい」
集中していたせいか、
食いしばる力が強かったのか、
口から血が出ていることに気付かなかった…
「……はぁ…、あれ、やるか…」
「?」
上を見上げる雷につられて上を見た、小窓か…
「封牙、肩貸して」
「…う、うん」
雷がすっと俺の上に乗る…身長の割に異様な軽さ…
小窓をうまく開けてぐいっと入り込もうとする…
うっわ…あの狭い通路を…入れるのか?
身体が柔らかいとは言え…流石に凄い…
反対側に降りたのか、ガチャっと鍵が開く音がしたが…
ん?開かない?
「…な、何でだ!?」
「来るな!!!」
え?
いきなり叫ぶからびっくりした…
なんだ?何が起きてる?
嫌だ、雷!!…
「行く!開けろよ!!!」
「…見せたくねぇ…」
「…雷!!!」
…必死だった、必死に叩いたから、
扉が無理やりにでも開いて俺が倒れ込むように部屋に入る。
「馬鹿野郎!!!」
慌てて雷は俺の目を覆う。
まって、この腐った匂い…
動物が腐ったような…ヴぅ…
胃から食べたものが迫り上がってくる気持ち悪い、やばい…
思わずその場を離れようと速川を突き飛ばして扉の外に出たが、あまりにも鼻につく香りに、
戻ってくるのが耐えられない。
「やっぱり、鼻が効くならこれはキツいよな…封牙…落ち着いて、息して…大丈夫だから、俺が全部焼いてくるから」
「はぁ…はぁ…ら…らい…ごめ…」
最悪だ……こんな情けない姿…
不意に見上げた雷はいつも首に下げていたロザリオを口元に当てて祈るようにしていた。
あぁ、死体が目の前にあるんだな…
雷は見慣れてるんだろうか、怖くないのかな…
その光景から目を背けてる自分の弱さに涙が出そうだが食いしばった…
弱すぎかよ…
パリンッと、瓶の割れる音…
アルコール…酒の匂いだ…
それが何度か続いた後急にブワッと熱いものを背中に感じる。
火…
「雷…」
ようやっと俺が振り向くと火を背にして俺を立ち上がらせて
「急ごう、BLACK OUTは燃えても効力があんだよ…結構キツい」
「…」
そう言った。
頼もしい…
いつも、俺ってなんか雷に助けられてばっかな気がする…
強く言ってくれた言葉も、全部…
俺が1番?仲良い?
本当か?
忠犬の方が…
…いいんじゃないか?
自信がない。
こんな弱いままじゃ、嫌だ。
「封牙!速川!!」
雅人が俺たちに向かって走ってくる、
「忠犬、封牙をおぶれるか?」
「任せろ」
「いらない!!!!」
思わず自分で立ち上がろうとしたが、
身体がふらつく。
「おっと、封牙…おまえBLACKOUT吸っちまったのか?」
「いや、お前と同じで鼻が効くみたいなんだ…死臭に…やられた」
「チッ…」
忠犬が俺を無理にでもおぶって「任せろ封牙」と優しく言ってくれた。
「…役立たずで、ごめん」
「死臭は…はじめてか?」
「え、あ…うん」
「なら仕方ない、俺も同じようになった…」
「?」
忠犬がニカッと笑って見せて走り出す、
雅人や速川が先人を切って前を走っていく。
「あ、もしもし?ザキ?…うん…」
雅人は必死に電話をしながら走ってるようだ。
「…死臭って…嫌だね」
朦朧とする中で忠犬に声をかけた。
「俺は慣れたよ…」
「……」
「いいか、封牙…鼻が効き過ぎるのは仕方ねぇ…だから俺たちの生きる道は慣れるしかねぇんだ」
…そんな…
「まぁ封牙がどれくらい匂いに敏感なのかしらないが、辛さは俺がわかってる、大丈夫だ…1人じゃない」
忠犬は会ったばっかりなのに、
暖かい言葉ばかりくれた。
「雷がいれば、大丈夫だ」
「え?」
その意味がわからず、雷を見つめる。
不意に目があったが逸らされた。
どういうことなんだろうか。
「忠犬!!!トラック出して!撤退!!!!」
雅人の声で、
元の道に抜けてトラックに俺たちは乗り込んだ。
忠犬がトラックを走らせた瞬間、真ん中に座っていた雷が口元を押さえ咳き込むと同時に口から血が…
ッ!
「雷!?」
俺の驚くよりも早く、
何かの異変に気づいてだろう忠犬が雷を抱えるようにして口に無理矢理手を当て薬を飲ませながら片手で運転していた。
「無茶しゃがって」
「はは…」
忠犬の言葉に苦笑いしながら薬を飲んで真っ青な顔をしていた…
「封牙、もう体調平気なら雷を支えてやれ」
「…」
何も言えないし頷きながら涙が溢れた。
俺は…
「後ろに水もある、封牙も薬飲んどけ」
「わ…かっ…た…」
絞り出した声は弱々しい。
悔しい、悔しい、悔しい、悔しい…
「雷…」
腕の中で水を飲ませる…
「死ぬわけじゃないんだし、泣くなよ」
俺の涙を拭ってくれる。
顔は真っ青なのに…優しく笑っていて…
雷の匂いがほのかにして…
ドキドキが止まらなくて…
強くなりたい…
雷を守りたい…
携帯の着信が響き、
たくさんのやつがトラックの荷台の上に集まっていく…
それを助手席から眺めていた。
ここにいる全員が…
春輝の仲間…
俺が足手纏いになるのは、嫌だ…
痛感した、
いざって時にこんなに自分が役に立たないなんて…
…
同じように感じたやつもいたかもしれない。
春輝がチーム結成の声を上げた瞬間に俺は身震いがする。
…ーーー
ここにいる誰よりも強くなりたい。
雷に見合う人間になりたい、自信が欲しい。
…
……
すやすやと俺の腕の中で眠る雷を見ていると、
俺も一緒に闇に落ちていたーーー…
……!!!!
ハッと目が覚めると自分の部屋にいた、
慌てて起き上がる、
少しダルい感じはあるけど
正常だった…
ホテルに行くなんて場合じゃなかったな…
雷…
雷は大丈夫なんだろうか、
部屋を出るとまだ誰も起きてないのか…
隣の雷の部屋をノックしようとしたがやめた。
…だめ…だよな…
ゆっくり階段を降りていくと、
そこに忠犬がいることに気付いた。
朝、早いんだな?
「おはよう」
ソファからキリッと俺に笑いかけてヘアバンド で髪をあげる。
「忠犬…おはよう」
元気なく俺が言うと「体調大丈夫か?」と優しく聞いてくれた。
本当にいいやつだな…
でもなんでこんなに胸が痛いんだろう。
忠犬がもし雷の近くにいたら…
……あんなことに…
「なんか食べるか?」
そう聞かれたが、首を横に振った。
今食べる気には…なれない。
「ふん…」
鼻を鳴らし、忠犬が天井を見ていた…
とりあえず横に座ろうと俺が向かっていく矢先に
ヒュンッと足をかけられバランスを崩す。
「ッあっ」
それから立て続けに蹴り飛ばされ、
ブォンッと顔面を拳が通り抜けた。
「……封牙、…バランスが悪いな」
「!!」
忠犬から見てもそう見えるのか…
「なぁ、…封牙、雷が好きか?」
「は?えっ!?//」
いきなり直球すぎる言葉に俺が慌てると、
表情ひとつ変えずに忠犬が俺の手を取り無理矢理立たせた。
「お前みたいなヤツを昔見たことがある…大丈夫だ、強くなるぞ封牙」
「な、何いきなり!?」
全然言ってる意味がわからないがとりあえず、
悪い話ではないんだろうか。
「雷はモテるが自覚が無い、告白はしたのか?」
「ちょ…早、、直球!?//」
「隠さなくていい、俺はそう言うのが苦手だ」
「あぁ…」
調子が狂う…
はっきり言われるとなんかもう悔しさより
気持ちよさが優ってきていた。
「やっぱり、モテるよな雷…」
「そうだ、特に男にな」
「ははっ」
忠犬の話は嘘が全く無いんだろうな。
「…だが、春輝に縛られ過ぎて全部断っている…封牙、もう一度聞く…告白はしたのか?」
「……し…た…」
あれ?まって、断ってる?
…断られたこと…
「断られては居ないんだろう?好意を寄せてることに」
「え、う…うん」
「なら大丈夫だ、俺はお前達を応援する」
断られてないなら脈があるって言いたいのか?
こんな俺でも?
「…どうやら、封牙も鈍感なタイプのようだな…仕方ない……封牙」
急に手を伸ばされ握手だと思い手を取ると、
身体が宙に浮く…うっわ…!!!
ソファに身体が打ち付けられ、
背中に優しい衝撃が来る。
すっげぇ…
「…あぁ"ーーー忠犬、頼む!!!強くなりたい…雷を…もうあんな目に合わせたく無い…役立たずは嫌だ!!!!!」
「任せろ、封牙は強くなるぞ」
「ッ…」
なんでだろ…嬉しいのに悔しい…
無理矢理笑顔を作ったまま話す。
「…ごめ…トイレ…いってくる…」
「じゃあそのついでに雷を診てきてくれ」
「え?」
「寝たきりで起きてこない…聞いた話だが…封牙はよく傍にいるんだろ?」
「わ、わかった!」
不思議な気持ちだった。
悔しいのと、
強くなりたいのと、
忠犬への期待なんだろうか。
強くなれると言われた事に…
肯定されるような言葉に…
後押しされるように…
トイレを済ませた後…
…ゆっくりと雷の部屋のドアノブに手をかける。
開いてる…
……部屋に入ると眠る姿が目について思わず駆け寄った……
会い…たかった…
「雷…」
近寄って心臓の音を聞く…
あぁ、生きてる。
…死なないってわかってても、
怖いんだ…
その音を聞いてるとふわっと頭を撫でられた。
「はよ」
優しい声。
朝苦手なんだもんな…
「おはよう」
俺が笑いかけると
「俺も… 会いたかった …」
確かに雷は、そういった…
俺今…会いたかったなんて…
言ってないけど…?
寝ぼけて…る?
「うん…」
手を伸ばされたので、
手を取ると、首を傾げていた。
「封牙、来て?」
あぁ、そうやって甘えるから…勘違いしそう。
「…はぁ…こう?」
俺が雷を抱きしめると、
いつもより強く抱きしめられた。
「封牙、お前…俺に遠慮し始めた?
それとも自分が弱いとか思ってる?
そういうの寂しくなるからやめてよ」
顔は見えない…全く…見えないし、
強く抱きしめられてるから、全然身動き取れない。
「速川??…な…なに?寝ぼけてないの?」
「起きてた…もっと前から…なぁ、どうなの?」
凄い今、心臓がうるさい。
…雷にこんな強く抱きしめられて…
嬉しくて…苦しい…
「ま…守れ…なくて…やく…たたずで…悔しくて…」
声が震える。
きっついなぁ…
…こんな感情、、
…これ以上好きになったら…
…俺…
「ねぇ、俺は…封牙が居てくれたから強くなれた…俺があの場所で冷静になれたのは封牙が居たから……絶対2人で切り抜けるんだって思ったから、それが俺の強さになったとしても封牙は自分を責めるの?………離れたら許さないから」
「ッ…」
「…雷って呼んでいいよ、ね、封牙は俺のこと好きって言ってくれたくせに…」
「雷!!!!」
それ以上に何か言われたら余計に胸が張り裂けそうで思わずベッドに倒した。
「わかった!わかった、離れない…雷……」
すっごい自分の顔が熱くて真っ赤だと思う…
「す…好き…大好き…ずっといる…隣に…いたい」
真剣に雷を見て言うと優しく笑って少し赤らんだ。
「封牙、蛸みたいだな」
「ッ!ーーー!!雷、、、意地悪」
「ははっ」
いつもみたいに笑ってる。
あぁ、ずっとこんな日が続けばいいのにな…
思い切って、雷を抱きしめて口付けた。
好き…
優しく、
唇を舐めると雷が俺の首に手を回して来た。
「ん……封牙は…他のやつより何か…いい//」
「?」
「なんだろうね、不思議…封牙にされるの…違うんだよね…気持ちいいから…//」
……それきっと誰にも負けないくらい……
優しくしてるし…
雷が好きだから…
なんて自分のエゴを飲み込んで、
「そっ…か……へへ、嬉しい//」
いつもみたいに笑った。
…強くなって、雷を…
春輝からも、
忠犬からも、
奪いたいなんて…
こんな気持ちになる自分に…
嫌だったのに…いつのまにか、
悪く無いと思っていた。
……依存…かな……
失敗は怖い、でも…
こんな気持ちはじめてで、
諦めたく無い…
「ねぇ、雷」
「ん?」
ぎゅっと背中に回って抱きついて首筋に噛み付く。
「封!?牙ッ//」
「……俺強くなるからね」
気持ちと行動とは裏腹に
雷に優しく笑いかけ強く言った。
END
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