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長く生きたあやかしは、あらゆる言葉を解するようになる。
ある者は獣の、ある者は虫の、ある者は人の、そしてある者は植物の言葉を解するのだ。
言葉があれば考えや気持ちを伝えることができる。
そうなれば自ずと諍いも愛も生まれてくる。
そのせいか、あやかしは言葉を解した存在に心をくばり、行動を共にし、相手が言葉を吐くことができなくなるまで添い遂げることもある。
野生の獣であれば長くとも十数年、虫であればおよそ四半期、人であればだいたい数十年。植物は一晩から数千年まで様々だ。
葉の茂っているときにしか言葉の通じないあやかしもいれば、ワタシを待つあやかしのように花が咲いているときしか声を聞けない者もいる。
かと思えば年がら年中意思疎通のとれる者たちもいるのだから、この世を作り上げたのはよほどの粗忽者か、悪辣と偏見の権化なのだろう。
……天をにらんで毒を吐いたところで、なにが変わるわけでもなし。
それよりも今は、桜の丘からすごすごと帰ってきたワタシのあやかしを木陰に入れてやらなくては。
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