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春になると、貴方は毎年必ずこの丘に来てくださいました。
貴方の声は届きません。
貴方の言葉はわかりません。
けれど、貴方がずっと私のそばにいてくれたことだけは、わかっていました。
貴方が側にいると、柔らかい風が吹いてきます。
とても心地よくて、私はそれが好きでした。
少し前に、貴方のお友達が声をかけてくださいました。
貴方のことを、教えてくださいました。
そのとき、私ははじめて貴方のことを本当に知ることができたのです。
貴方が、私とお話したいと考えてくれていることを知って、とても嬉しく思いました。
私も、貴方とお話してみたい。
お友達を介して、お話することもできるかもしれませんが、私は貴方の声と言葉を通して、貴方の心を知りたいのです。
でも、きっと、それは叶わないのだと思います。
私の根は腐りつつあります。
私の幹はもうほとんど空っぽです。
私の枝はもう伸びることはありません。
葉や花を付けることはできますが、数も年々減っています。
貴方は、気づいていらっしゃいますか?
気づいていないと、いいのですが。
気づいていたとしても、気になさらないでと伝えられたら、いいのですが。
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