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ガタッ ゴトッ
何かの物音が聞こえた。
気のせい、と思いたかったけど……あまりにもハッキリと聞こえたせいで、寝ぼけていた頭も目も覚めてしまった。
お母さんとお父さんの寝室からだ。しかも、灯りがついている。
あたしは息を飲んで、そぅっとそぅっと近付いて、光こぼれる引き戸のすき間から、部屋をのぞいてみた。
たたみの床は、物で散らばっていた。けしょう品やマニキュアのビン、服とかいろいろ……じっくりとあとを追うように見回して。それを見たしゅんかん、ヒッと声を上げそうになった。
男の人だ。男の人が、押し入れをあさっている! ドロボウだっ!
ドロボウが押入れからはい出て来ると同時に、ある物も一緒に出てきた。
ずっと忘れていた、あの木箱だ。
ドロボウは何だこれと顔をしかめながら、フタを開ける。
すると3年前と変わらない、真っ白なカーディガンが姿を現した。
ドロボウも、その美しさがわかったのか。目の色をたちまち変えて、ほほぅっと興味深そうに向きを変えながらながめた。
すると何を思ったのか、そでを通した。
待って、ダメッ、それは……!
マズいと思ったけど、見つかったら何されるかわからない。そう思うと恐くて、なるべく息を殺して、そのまま様子を見ているしかなかった。
ドロボウは上キゲンに立ち上がって、くるりと回ってみたりもした。まるで女の人が鏡の前で、デート服を上キゲンにチェックするみたいに。
「うん、悪くねぇ。こんだけ綺麗なら、売ればきっと金になるぞぉ」
男の人の共通するクセなのか否か、その時ドロボウはカーディガンのポケットに手を突っ込んだ。
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