蜘蛛の糸カーディガン

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 念のためにと入院していたあたしは、数日ぶりに家に帰って来た。  さすがにドロボウも、クモもいなくて、正直ホッとした。  ドロボウやクモが、あの後どうなったのか気にはなったけど……何となく聞くに聞けなくて。そのまま、だまっておくことにした。  ふと部屋のカベを見て、背筋がこわばった。  あのカーディガンが、何故かいつもみたいに木箱にしまわれていなくて、ハンガーにかかっていたからだ。  それを見たお母さんが、  「あんな事件があったでしょ? それでしばらく、警察の人たちに証拠品として提出していたの。昨日ようやく帰って来て、少しの間あぁして干していたの。たまには空気吸わせてあげないとね」  「へぇ…そう、だったんだ」  「やっぱり、まだ恐い?」  「うん、少しね。でも…」  「でも?」  「ちょっとだけ、ありがとう…っていう感じかな」  やっぱり3年前と同じで、いまだに着てみたいとは思わない。あんな事件があった後だし。  だけどその半面、もしこのカーディガンがなかったらと思うと……背筋がこおって、ふるえそうだった。  逆に考えると、ある意味このカーディガンに救われたんじゃないかって。少しだけ感謝したくなった。  さすが、我が家の家宝だけのことはあるねって。
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