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ウチには、ちょっとヘンテコな家宝がある。
それを初めて見たのは、あたしが小学3年生になった頃。お母さんが嫁入りの時に持って来たという木箱を、押入れから出した時だった。
中には一見なんの変テツもない、真っ白なカーディガンが入っていた。
なんでも遠い昔、ご先祖さまに助けられた一匹のクモが、お礼にと自分の糸で編んだカーディガンを送ってくれたらしい。
その時、クモはこうも言っていたという。
「心正しき者が羽織れば、その者に幸運をもたらす物がポケットの中から出てくる。しかし心悪しき者が羽織れば、その者に災いをもたらす物がポケットの中から出てくる。それをゆめゆめ忘れるな」
実際、お父さんと出会うキッカケにもなった指輪は、このカーディガンのポケットからもらった物なのよと。キャッキャッと恋する乙女みたく、お母さんはうれしそうに、はしゃぎながら語った。
試しに貴方も着てみる?──って言われたけど、今はいいやって、軽くはぐらかしといた。
汚かったワケじゃない。むしろ買いたての新品みたいに、まっさらでキレイな白色だった。
前に雑誌で見かけた、白無垢みたいだなぁって。そう思えるくらい、本当にキレイだったんだけど……
正直、クモのお腹から出されて編まれた糸のカーディガンなんて、ちょっと気持ち悪かった。
それに家宝っていうから、もっとこう、戦国時代とかにありそうな、きらびやかな着物とか小刀かと思ってた。
だからその時は、ちょっとがっかりした。
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