24人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言うと聡介は、潤んだ声で謝り、電話を切った。
沙織は、チョコを台所に隠していた。もともと出張から帰ってきた聡介にあげようと思っていたバレンタインチョコ。
でも、この電話のやり取りで方針を変えた。帰ってきた聡介が、沙織に直接、今までお礼を言わなかったことを謝ってくれたらあげようと。
「ただいまー。」
「おかえり。聡介。疲れたでしょ。イベントどうだった?」
「ああ、成功だったよ。今年は、俺の企画した流れだったんだけど、大成功だったよ。」
聡介は、満面の笑顔だった。
「そう、良かったわね。」
沙織が、唇を噛む。
「お風呂入れる?」
「お風呂でもご飯でもどうぞ。」
沙織は、皮肉混じりに言ったつもりだった。
「じゃあ、お風呂に入ってくるね。」
聡介には通じない。
さっさと脱衣場に向かう聡介の背中を見て、お風呂より、ご飯より謝るのが先でしょとため息をつく。
お風呂から上がった聡介は、そのまま自分の部屋へと帰っていった。
トゥルルルル
電話が鳴り応答する。
「もしもし、お母さん。」
娘の綾からだった。
「お父さんのバレンタインデーのイベント、すごかったよ。
最初のコメントを投稿しよう!