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――そして、途方もない時間が過ぎた。
何億年なのか、何十億年なのかも分からないほどに。
「やぁ、『地上』の観測は進んでいるかい?」
それは遥か大宇宙の片隅に青く輝く星。その、高度1000キロの上空で周回する宇宙船の中。
「そうね。順調よ」
各種観測機器の様子を見ながら、もう一人の宇宙飛行士が満足げに頷く。
その窓の向こうには、緑の大地が広がっている。
「これで、我々が確認した知的生命体の住む星は8個目か。探せばまだあるのかも知れんが……」
無重力の船内を漂って、窓に近寄る。
「それにしてもここも同じとはね。何処の星へ行っても、高度知的生命体が持つ形体は我々と基本的に変わらない。いわゆる『人型』だ。不思議なもんだな」
「うん……もしかしたらあれは本当なのかもね。『星の種仮説』って。遥か大昔、最初に生命が生まれた星から旅立った『命』が、まるで花粉のように次の星へと到達して広がって行ったんだって……学校で習ったわ」
モニターから眼を放し、感慨深げに地上を見つめる。
「私達が『次の星』を目指そうとするのも、実は『最初の命』から託された意志を無意識に継いでいるからじゃないかしら」
「ははは……そうか、そうかもな。でも、そうだとすると何でオレ達は誰もいない星ではなく誰かのいる星を探そうとしているんだろうか。それもまた、何かの『意志』なのかね」
そう言って、すぐ隣にいるパートナーの肩を抱く。
「そうね、そうなのかも。例えば私達の『最初の祖先』が、この広い宇宙に何かを探していた……とかはどう? 生き別れとなった恋人と再び出逢う事を願っていた意志が、私達にも受け継がれている……なんて、素敵じゃない?」
「なるほど、それはロマンチックだ。でも、その相手は何十億年も前に死んでる訳だろ?」
宇宙の時間スケールは、生命体とは桁が違うのだ。
「そうだけど……でも、『探そう』とする魂が繋がるのだとしたらその相手の魂だって受け継がれていても不思議はないでしょ?」
「ああ……そうか、それはあるかもな」
「うん。この星を見ていると、何かそんな気がするの。もしかしたら私達はこの星に辿り着きたくて、宇宙をさ迷っていたんじゃないか……って」
眼下に広がる、かつて『地球』と呼ばれた星を前に、遥か宇宙からの旅人はそっと涙を拭った。
「だって……花が咲いて『飛んだ花粉』は番の花を探すものでしょ?」
完
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