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ピー……ピー……。
規則正しいアラーム音が耳を騒がせる。
酷く身体が重い。頭がガンガンと痛む。気の所為か、妙に身体が冷えてるような感じがする。
「くそ……誰か、その音を止めてくれ。うるさくて敵わん……」
段々とハッキリしてくる意識の中でボソリと呟くが、その願いを叶えてくれる反応はなかった。
「何だよ、誰もいないのか……?」
仕方なしに眼を開ける。僅かな明かりに、異様に狭いベッド。まるでそれは棺桶にでも閉じ込められたような……?
「……何処だここ? 何でオレはこんなところにいる?」
記憶が付いてこない。随分と長く寝ていたような気もするが……。
よく見ると寝ている自分の真上に透明な『蓋』のような物が被さっていた。
「な、何だこりゃぁ」
どうにか退かそうとしてゴソゴソ動いていると、何かのスイッチを押したのか、その蓋が突然にガコン……と重い音を立てて開いた。
キー……ン。
アラーム音はいつの間にか止んでいる。その代わり、オレの回りをぎっしりと取り囲む機械が微かな金属音を立てていた。暗くて狭いスペースに、状態表示の小さなランプが照明代わりにオレを照らす。
「とりあえず、ここから出ないとな……」
軋む身体と脳をどうにか動かして、モゾモゾと『棺桶』を這い出る。何処かに出口はないのか、手探りで色々触っていると何かのハンドルらしき物が当たった。
これか? と思いつつ動かすと、ギギ……という音とともに小さなハッチが開き、その向こうから眩しい光が差し込んできた。どうやら自然光のようだ。
「くそ、狭いな!」
何故だかズキズキと痛む身体をおしてハッチから外に出ると、そこは円筒形をした空間になっていた。どうだろう、キャンプに使う1人用テントほどの広さか。リビングにしては少しばかり狭いだろうが、オレ一人ならどうにか手足を伸ばせるくらいはある。
そして、その端っこには掌ほどの直径をした丸い窓が。その先にある外部から、太陽の光が差し込んでいるのが分かる。
「何処だ、ここ……」
窓際に寄って、外を見る。荒涼とした大地と、海らしき物も見えた。草木の類は確認出来ない。じっと耳を澄ましていると、微かな波の音が聴こえてくる。それと、僅かながら何かが焦げたような臭いが。
と、その時。
《目が覚めた? カーミラ》
誰かがオレを呼ぶ。電子音声っぽい感じ。
「え……?」
振り返ると、小型のモニターがオンになって人の顔が映し出された。
「お……お前は!」
その顔だけは、決して忘れない。そう、例え自分が何者かすら忘れたとしても、この宇宙で最も愛おしい『その顔』だけは……。
「シェ、シェリーじゃないか! ど、どうして……」
《いい? よく聞いて。このコマンドが実行されているという事は、奇跡が現実になったという事なの》
どうやら画面のシェリーはリアルタイムではないようだ。……録画?
《今あなたがいるのは地球から5500光年離れた、惑星12365-b……おめでとう。あなたは10万年の旅の末、そこに辿り着いたのよ》
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