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全てを消し終わったときベルが鳴り、ソファーに寝そべっていた私が体を起こすと仕事をしていた月野瀬が姿を現した。
「いいか? 黙っていればいい。黙って俺に合わせてくれればいいから何もするな、何も言うな。いいな?」
「ラジャー!」
時給1万円ですもの。できる限り頑張ります。女は強し。
月野瀬がドアを開けるとそこには可愛らしい女性の声がした。
「晴翔さん、会えて嬉しい」
彼女は何も知らないようだ。月野瀬が彼女を部屋に通すと部屋中に甘い華やかな香りが充満した。これが男に愛される女なのか。そして姿を現した沙羅は、小さくて可愛らしい女性だった。こんな人でも浮気をするのか。
「えっと……晴翔さん、この人は?」
「それは後で説明する」
「えっと、あ、もしかしてお仕事の方ですか? 早く来すぎちゃったかな。えへっ」
黙っていろと言われたので黙っているが、異様な雰囲気だ。沙羅は月野瀬に促されて私と向かい合った場所に座らされた。私は手持ち無沙汰になり窓の外の夜景を見ながら冷めたコーヒーを飲んでいた。気まずい、気まず過ぎる。
暫くしてようやく待ち人が現れた。
「お越しいただきありがとうございます。どうぞ」
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