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「人には言いたくない事もあるものです。言わなくて大丈夫ですよ」
「なんだその仏顔。まさか……」
私は顔全体の筋肉を緩め、菩薩の顔をイメージしながら月野瀬を見つめた。
誰にも言いたくない事だってある。機能しなくても男は男。関係ありません。自信をもって。
私は表情でそう伝えた。
それからはスローモーションだった。
不思議そうにしていた月野瀬の顔が次第に緩み、笑顔になって私の腰に腕を回し、体が引き寄せられると顎クイされて顔が近づき、唇が重なった。月野瀬は私の口を無理やり開かせ、舌を絡まらせてきた。
「んっっ……んん」
男の力に勝てないのはよくあることだが、私はそれ以上に月野瀬の誘いに勝てなかった。
絡み合った舌は次第にお互いを求めあい、一層絡み合わせると月野瀬の手は私の頭に回され、さらに深くお互いの中を犯していく。
誰としたキスよりも心地よかった。優しくて、繊細で、それでいてどこか強引で、私の知らない世界へと導くようだった。
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