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事との始まりは数時間前、私が仕事を終えて会社を出ると国宝級イケメンが話しかけてきた。
「冴木里桜さんですね」
私はこの人を知っていた。イケメン好きだから?
それは否定できない。
だがそういう話ではない。
何を隠そう彼は私が働いている会社プールトワップの社長だ。
月野瀬晴翔。
20歳で起業し、自身で開発したアプリを大ヒットさせた。そのアプリはどういうわけか数年後に他社に譲渡し、月野瀬は暫くの間世間から姿を消していた。
28歳の時にプールトワップを設立し、この5年で多くのアプリを開発してはヒットさせている。私が元々働いていた会社は先月この会社に吸収合併されたのだ。
私は就職活動で夢破れ、なんとか入れた会社はブラック企業。プライベートや人権という概念がない会社だった。1年耐えたがボーナスもなく、基本給が1円たりとも上がらない現実に嫌気がさし会社を辞めた。
転職も上手くいかず、なんとか拾ってもらったのが吸収される前の会社だった。事務職という雑務係をしていた私にはかろうじて休日と人権があったので前職よりましだった。
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