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元々、女性向け恋愛シミュレーションゲームを得意としていた会社だったが、スマホの時代になりゆっくりとだが業績悪化の一歩をたどっていた。
ここ数年はアプリにも着手していたが、なかなか思うようにヒット作が生み出せず、思い悩んでいたらしい社長は社員ごと月野瀬に会社を売ったのだ。定年を超えていた社長はある意味経営を放棄しお金に換えたのだ。
当然月野瀬の会社はお荷物を背負うことになったのだから、いらない社員はリストラさられるともっぱらの噂だ。今は査定されている時期だと言われている。
「世間は狭いな。とりあえず車に乗って」
リストラの話をするのに車に乗れとはなんとも変な話だと思いながら私は言われるがまま助手席に乗った。車の中は爽やかな石鹸の香りがした。
「あの、本社に向かわれるのですか?」
私が毎日出勤しているビルと月野瀬の設立した会社が入っているビルは異なっていて車で数十分程離れている。
「いや、落ち着いて話しができるところに移動する」
落ち着いてリストラの話しか。絵を描けるわけでもないし、プログラミングができるわけでもない、シナリオを考える創造力すらない私には当然の結果だ。
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