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若葉かおるからの電話
アカシアマンション事件から2週間が経っていた。
矢吹も数日後には、マンション管理士の役目を終えて、警視庁に戻ることになっている。
次の指令がそろそろ降りるはずだ。
陽子はアカシアマンションを去る日の桑野との会話をずっと反芻していた。
あんなに助けてもらったのに、自分は何て身勝手な言い分で桑野を責めたんだろう。
謝りたい。
その気持ちは日に日に増していた。
そんな時、陽子の携帯が鳴った。
若葉かおるからだった。
「こんにちは、若葉です。
先日はいろいろお手数をおかけしました。
もうニュースなどでご存知だと思いますが、お陰さまで私も茜芸能事務所を告発し、退所しました。
良かったらお会いできませんか? 」
明るい声だった。顔は見えないけれど、明らかに吹っ切れた潔さにあふれている。
陽子は二つ返事で応じた。待ち合わせはあの喫茶店。
上司の了承をもらって出かけた。
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