第二話 奪われた唇

2/7

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
 真唯は間宮と一緒に戸田に連れられて、六本木ヒルズを出て『ベリー』という名の洋風居酒屋に入った。 「ヒルズタウンで食事かと思っていたのに」  真唯は遠慮なく不満を口にした。 「お前、ヒルズで食事して払えるのか?」 「えっ、奢りじゃないんですか?」 「俺は彼女の誕生日やクリスマス以外に奢らない。まあ先輩だから多少多めに払うかもしれないが、基本は割り勘だ」 「さっき、歓迎会って」 「歓迎会兼教育だから名目上相殺だ」 「なーんだ。じゃあ、たくさん教わらなきゃ」  真唯と戸田の会話を間宮が呆れたように見ている。  お疲れさまと言って乾杯が終わると、真唯は早速質問を切り出した。 「今日の私の初仕事ですが、どうすれば良かったのですか?」 「なんだ、自己紹介の前に早速仕事の話か」 「歓迎会相殺の分、さっさと教えてもらわないといけませんから」 「結論からいくと、秋山は作業を始める前に間宮か俺に自分の考えを話して、確認を取るべきだった」 「えー、だったら、最初から教えてくれればいいじゃないですか」  なんて回りくどいんだと、真唯は思った。今日資料の内容を理解するために、費やした時間を返して欲しかった。  当の間宮は、面白そうに真唯の顔を見ながらニヤニヤしている。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加