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「よく言うぜ、先輩社員を追いだした奴が」
戸田が薄ら笑いを浮かべながらビールを飲む。
「えっ、何ですか先輩を追い出したって」
私のテンションは一気に上がった。
戸田と間宮が顔を見合わせる。
「あんたが言い出したんだから、ちゃんと説明してよ」
間宮がめんどくさそうに説明を押し付けた。
戸田は苦笑いを浮かべて話し始めた。
「いや、うちではよくある話なんだが、間宮がうちのチームでは大きなプロジェクトのアシスタントに選ばれたんだ。ここで認められたら、翌年はアカウントプランナーで契約じゃないかと言われていた。ところがだ」
ここで、戸田は間宮の顔を見る。間宮は無表情だ。
「そのプロジェクトのアカウントプランナーが酷い奴でな、間宮の意見を全然採用しないで提案を進めて、結局コンペで負けたんだ。先方から提示された不採用理由が、ほとんど間宮が指摘したことだったんだが、逆に負けた理由を間宮のせいにしようとした」
「なんだかテレビドラマみたいですね」
真唯は話を聞いて楽しくなった。
ドラマならここで救世主が現れて、ヒロインを救い恋に陥る。
「まあ、うちではプロジェクト会議の内容は全て記録されるから、すぐにそいつが原因だと分かるんだけどな。それが不満でそいつはキャリア入社したその年に辞めていったよ。普通の会社なら先輩社員に忖度するもんだとか言い捨ててな」
「なんかかっこ悪いですね」
「ああ、うちは厳しい代わりに、公平でもある」
「何が公平よ。そいつのおかげで私は実績が上げられずに、今年もアシスタント契約だった。あんたはいいじゃない。椋本さんのプロジェクトで大成功だったんだから」
間宮は少し酔ってるみたいだ。口調がぞんざいになっていた。
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