第3話 二番目の女

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 行為が終わって黙っている真唯を気遣って、戸田が優しくキスをしてくる。  そのキスには、タクシーの中でされたときのように、身体がくすぐられるような感覚はなかった。 「何を考えてるの?」  キスした後で、戸田が訊いてきた。左手は真唯の裸の胸にそっと置かれる。  何を考えてるわけでもない。疲れてしまったのだ。  戸田はサービス精神が旺盛で、行為も長かったので、終わった後で真唯はくたくたになってしまった。できることなら眠らせて欲しかったが、戸田が眠る気配はない。もう一度したいのかもしれないが、それは勘弁してほしかった。 「どうして私を誘ったんですか?」  仕方がないから、答えにくい質問をしてやった。  当時の真唯は、それほど多いわけではないが、大雑把なタイプに分類できるぐらいには男を知っていた。  戸田のようなすぐにしたがる男は、なぜしたのか理由を訊くと困るものだ。男である以上、そこに理由はないことぐらいは分かっていた。  ところが戸田は違った。  異様に饒舌だった。 「実は、ミスを伝えに行って会ったときから、これは好みだと思ったんだ」 「それって、一目惚れってことですか」 「それに近いかな」 「見た目だけですか?」 「飲んで話していて、向上心も強いし、頭もいいと思った」 (そうなのかなぁ?)  自分では頑固なところはあるけど、向上心が強いなどと思ったことがないので、びっくりした。しかも、すごく頭の切れそうな戸田から、頭がいいと褒められて、嬉しくなってしまった。 「好きになりますよ」 「なってよ、そうなったら嬉しいな」 (もしかして、結婚とか考えてるのかなぁ。まだ働き始めたばかりなんだけど) 「メアド交換しよう」 「いいですよ」  真唯は携帯のメアドを交換した。 「戸田さんって、一人暮らしなんですか?」 「そうだよ。遊びに来る?」 「行きたい」 「俺も秋山のうちに行ってもいい?」 「来てください。ご飯作ります」 「ありがとう」
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