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第一話 過去が蘇るとき
ウェディングベルが鳴り響く。
さほど広くないチャペルだが、列席者が新郎新婦の両親だけだと、さすがに寂しさを感じる。新型ウィルスでとてもじゃないが、参列者を呼べる状況ではないから仕方ないのだが、時間とお金の無駄を強く感じる。
それでも真唯のウェディングドレス姿を一目見たいと願う、母の思いをかなえるために、新郎の利信と彼の両親に無理にお願いした手前、嬉しそうな顔を見せないわけにはいかなかった。
思えばここにたどり着くまで長い道のりだった。
大学を卒業してから十六年間、挫折と歓喜が繰り返し訪れるジェットコースターのような人生だった。ここで命を絶とうと思った時期もあった。
六才年下の利信はそんな真唯の過去を知らないし、これからも話すつもりはない。別に今日から生まれ変わろうとか、この人こそ待ち続けた赤い糸などと、甘い夢を追ってるわけではないが、伝えなくていいことは伝えないという賢さは身についた。
真唯の花嫁姿を感激した面持ちで迎える母は、この十六年間の真実を知ったら、寝込んでしまうかもしれない。
神父の導きのままに愛を誓い、利信と誓いの証のキスをする。
寂しい結婚式も無事終わり、着替えのために控室でドレッサーの前に座ったとき、十六年前の始まりの日が、まるで映画のように頭の中に映し出された。
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