第3話 二番目の女

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「皆さん、朝早いんですね」  何となく、まだ会話を続けたかった。 「まあね。いくら就業時間外だと言ったとしても、客は待ってくれないからね。朝一で返信して客の機嫌が取れるんなら、みんな頑張るんじゃない」  間宮はそれ以上何も言わず、また仕事にとりかかった。  真唯も諦めて仕事を始めた。  間宮の課題は今日も難しかった。要求されていることを理解するのに一時間を要した。何とか目途が立ったところで、昨日の教えを守って間宮に作業内容の確認をした。 「うん、まあまあね。とりあえず相手のニーズは満たしてると思うよ。試しに依頼者の戸田君に確認してみたら」 「戸田さんにですか」 「昨日の今日だから嫌な顔はされないよ」 「はい」  声に力が籠った。  戸田と話せると思っただけで、元気が出てきた。  真唯はパソコンを持って、いそいそと戸田のところに行った。  戸田は見知らぬ女性と話していた。 「あの、戸田さんお話し中すいません、ご依頼の件について、確認を取りに来ました」 「あら、じゃあ詳細は後でまた打ち合わせしましょう」  話していた女性は、あっさりと引き下がってくれた。きりっとした顔立ちの仕事ができそうな女性だった。 「どれどれ、見せてみて」  当たり前だが戸田は昨夜のことなどおくびにも出さない。  熱心に真唯のパソコンを見ながら、資料を確認してくれる姿は、仕事ができるビジネスマンだった。  一方、真唯の方は戸田の指や唇を見ていると、自然に昨夜のことを思い出して、顔が熱くなった。 「うん、いいと思うけど、ここはどうしてこのデータを使おうと思ったの」  戸田のリクエストに従って、真唯は説明を始める。戸田は熱心に聞いてくれた。自分の仕事を真剣に見てくれる姿に、自分は特別じゃないかと、真唯はつい期待してしまう。 「了解、じゃあこんな感じで仕上げてくれる」 「はい」  OKが出て、天にも昇るような嬉しさを感じた。できることならずっと隣の席で仕事がしたいと思った。  そんな真唯の思いとは裏腹に、戸田はすぐに自分の仕事を始めた。なんだか物足りない思いで胸が苦しくなった。
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