第4話 止まらない恋心

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 周囲の者はだんだんと二人の仲を疑い出す。真唯の狙い通りだ。やがて、チーム内では二人ができてることを誰も疑わなくなった。真唯は間宮の反応だけが怖かったが、それについて彼女は何も言わなかった。  元々忙しい職場だけに他人の恋愛なんて、正直どうでもいいというのが皆の本音なんだろう。その意味では真唯の作戦はまんまと当たったことになる。  そして対決の日が来た。  アド・マーキュリーは七月に事業場ごとに、会社が予算を出して全社員参加の納涼祭を行う。社内のサイロ化を防ぎ、帰属意識を高めるために、牧野自ら発案したイベントだ。  納涼祭の企画は、イベント会社に発注され、忙しい牧野が自ら確認する。今年は高輪のホテルのビヤガーデンを借り切り、ヒルズ勤務者二百名と、新設された大手町オフィス勤務者四百名が集まる。  竹中グループは竹中プロデューサーを取り囲むように、メインステージから離れた場所に陣取る。メインステージ近くに陣取る藤田グループとは対照的だ。食事が取りやすいのと、飲む時ぐらい気ままに飲みたいという竹本の意向らしい。  竹本グループなので、戸田と沙也が一緒に来ているが、真唯は戸田と同じ渡瀬チームなので、開始早々から戸田の隣の位置を確保した。  沙也の視線を感じる。  負けるものかと、真唯はべたべたした行動に力を注ぐ。  沙也の視線が釘付けになる。事情を知ってる人たちの顔がひきつる。  間宮が怖い顔で真唯を睨んでいる。面倒になることを嫌っているのは明らかだが、真唯は無視した。  途中、沙也が戸田に話しに来たが、真唯は決して席を譲らなかったので、立ったまま話してしばらくすると去って行った。
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