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不思議なのは当事者の戸田が、周囲の心配を気にすることなく、過剰に接近する真唯に躊躇わずに接していることだ。沙也の視線をまったく気にする様子がない。もしかして、戸田は沙也への関心は無く、真唯とだけ付き合いたいと思ってるのではと、甘い期待が真唯の胸に浮かんだ。
入社以来ずっと気にかかっていた戸田の愛の矢印が、自分に向いているように感じた。勝利感で胸がいっぱいになる。
夢のような時間が流れ、納涼祭は終了した。二次会はチームごとにてんでに分かれて行われる。これで完全に戸田を独占した。納涼祭の間、戸田が沙也と二人きりで話す時間を与えなかった。
カラオケは盛り上がった。仕事が忙しい割には、みんな持ち歌が豊富だ。真唯もマラカスやタンバリンで積極的に盛り上げた。戸田とデュエットも歌った。
二次会が終わって、帰りがけに真唯は甘い気分に浸りながら、そっと戸田に囁いた。
「今日、家に行ってもいい? それともうちに来る?」
「今日はみんなの目もあるし、それにもう時間も遅いから、明日か明後日ゆっくり二人で会おう」
残念な答えだった。ここで二人で抱き合って寝ることで、今日の勝利を完全にしたかった。それでも、明日か明後日会ってくれるなら、それでもいいかと自分を納得させた。
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