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ワルキューレの騎行が高らかに流れた。戸田の着メロだ。
「もしもし、ああいいよ」
短い会話だが、真唯の心に不安がよぎる。
田園都市線で、真唯の住む桜新町と戸田の住む用賀は隣駅だ。電車が桜新町に着くと、真唯は一人でホームに降りた。
戸田を乗せた電車を見送りながら、寂しさと不安が胸を締め付ける。帰ってもとても寝ることなんて無理だ。
真唯はホームから去らずに次の電車を待った。
(このまま戸田の家まで行こう。行ってしまえば戸田は許してくれる)
真唯は覚悟を決めた自分を偉いと思った。
途端に心がウキウキしてくる。
用賀の駅から戸田の家に行く途中で、コンビニに寄って簡単なつまみと酒を買う。
戸田の部屋は明るかった。どこにも寄り道しないで、帰ったみたいだ。
エレベータを降りて戸田の家のドアを前にすると、心臓の鼓動が強く成り始めた。
今日は思いっきり抱かれよう。
ウェットな気分に支配されて、真唯は思い切ってインターフォンを押した。
「あれ、どうしたの?」
戸田が驚いていた。
「どうしても一緒にいたくなって」
インターフォンの先で戸田が黙る。
歓迎してもらえると思っていた真唯は、思いと違う対応に不安を感じ始める。
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