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入社して以来初めて会社を休んだ次の日、真唯は元気よく出社した。やはり若いせいか睡眠さえちゃんととれば気分は回復する。昨日は退職することまで考えたのに、あの憂鬱はどこに行ったのかという感じだった。
戸田に対しては、妹と嘘をついて沙也を泊めたことは、黙っておくことにした。突き詰めて、じゃあと別れ話を切り出されるのが怖かったし、沙也だって自分と戸田の関係に気づきながら泊ったはずだ。
意地でも戸田を失いたくなかった。いや沙也との勝負に負けたくなかった。
出社すると渡瀬に呼ばれた。ブースに入ると、渡瀬と見知らぬ三十代っぽい男がいた。
「紹介しよう、八月一日付で入社する新庄君だ。外資系コンサル会社PWCでマーケティングコンサルを取り仕切っていたのを、竹本さんが引き抜いて来た」
「新庄です。よろしく」
新庄は真唯に軽く頭を下げた。
「秋山真唯です。私も今年入社した新入社員です」
私も新庄に頭を下げた。
「秋山はもうだいたい社内には慣れたよね。今日から間宮の指導から外れて、しばらく新庄君の専属アシスタントをしてくれないかな」
「分かりました。あの、新庄さんの仕事はアカウントプランナーですか?」
「いや、彼にはマーケティングディレクターとして、各種プロジェクトに入ってもらおうと思う」
真唯への話はそれで終わりだった。まだ話を続ける二人を残して、真唯は自席に戻った。
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