9人が本棚に入れています
本棚に追加
退社時間になると、戸田から誘われたが、体調が悪いことを理由に断った。別に根に持ってるわけではないが、まだ市原と一緒に歩いていた記憶が生々しいので、酒が入るとつまらないことを口走る可能性がある。
できれば、そういうことはあいまいにして、最後に勝利を得たいので、今日会うことは諦めた。
自宅に帰ってから、インターネットでPWCについて調べてみる。すごい会社だった。世界的に見てもコンサルティングファームとしては指折りの会社だ。こんなところで働いていた人が、どうしてうちなんかに来たのか不思議だった。
案外PWCでは将来のめどが立たなかったのか、それでも竹本さんが直々に引き抜いてくるなんて、やっぱりすごい人なんだろうと思う。
とにかく明日からは一緒に仕事開始だ。私はアシスタントに過ぎないけど、新しい人と仕事への出会いに、期待が高鳴った。
次の日真唯が出社すると、既に新庄は来ていた。まだ始業二時間前である。初日は新庄よりも先に来ようと、がんばったのにやられたと真唯は思った。
「おはようございます」
気を取り直して挨拶する。
「おはよう。なんだ早いねぇ。いつもこんな時間に出社しているの?」
「いえ、いつもは後一時間遅いんですけど、今日はたまたまです」
「そうか、そうだよね。まだオフィスに人も少ないし」
「新庄さんはいつもこんなに早いんですか?」
「いや、全然。まあせいぜい出社時間の三十分前かな」
真唯は一安心した。さすがに毎日この時間に出社するのでは身が持たない。
最初のコメントを投稿しよう!