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真唯の配線は真野が手伝ってくれたので、すぐに終わった。でっかいモニターがデスクの上に二つ置かれ、エンジニア組の仲間になったようで少し恥ずかしかった。
パソコンを起動させると起動の速さに驚く。
今までたちあげるだけで、時間がかかったグラフィック系のソフトが瞬時に立ち上がる。グラフィックのスクロールも、問題なく早い。
「すごい」
今まであまり手を付けなかったグラフィックデザインへの距離が縮まる気がした。
「忘れてた。これも使って」
新庄が差し出したのは、ペンと四角いスクリーンがついた金属の板だ。USBでパソコン本体に繋いだ。
「これ何ですか?」
「デジタイザといって、パソコン用の紙と鉛筆だよ。見ててごらん」
新庄は提案用資料のいたるところに、デジタイザを使って書き込みを加えている。
まるで紙に印刷した資料に手書きで修正を指示しているみたいだ。
「こうやって修正点を指摘できれば、印刷する手間が省けるし、すぐにメールで送り返せる。何よりも、文字を書くという行為は、キーボードと違って、頭を刺激するだろう」
後にこれが私にとってステップアップのきっかけになるのだが、このときはそんな未来など思いもよらなかった。
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