陽炎

第５話 新しいリーダー

　新庄が来てから二週間が経ち、仕事内容が今まで一変した。まず紙を一切使わなくなった。新庄は全打ち合わせブースにもモニターを配備し、資料は紙ではなく、ノートパソコンから画面表示させてシェアする。打ち合わせで出て来た意見は、テキストエディタにその場で打ち込み、メンバーで共有した。
　最初の一週間は慣れずに紙に印刷していたメンバーも、その非効率性に気づき、一切紙を持ち込まなくなった。
　次に共有フォルダ内の資料のバージョン管理が徹底された。企画を検討する過程では、意外と古いバージョンに戻ることが多い。そんな中で資料作成の際に、最初にバージョンを決定する行為は、資料の整理以上に新たに加える変更が、資料の位置づけ的にどのぐらいの大きさなのか理解するのに役立った。
　例えば資料のバージョン番号が大きく変わるときは、例え変更になるのが一文であっても、資料全体の方向性を変えた変更だと認識できた。
　これは真唯たちアシスタントにとっても、そのときの資料変更が、プロジェクト上どういう位置づけになるか理解を進めるのに役立ち、企画業務を理解するのに役立った。