9人が本棚に入れています
本棚に追加
「すげえよなぁ、新庄さん」
久しぶりに戸田の部屋で過ごしているとき、ベッドの上で戸田がポツリと呟いた。
「えっ、何が?」
「いろんな仕事のしかたを知ってる知識ももちろん凄いけど、それを来たばかりの会社でどんどん展開していく行動力がもっと凄い」
「戸田さんも負けちゃう?」
「今はな。でも勝ち負けより成長できてる方が大事かな。今社内で渡瀬チームの生産性は確実に一歩リードしている。この流れに乗れば、確実に社内で認められるはずだ」
真唯には戸田の野望に満ちた顔がキラキラして見えた。この戸田に選ばれる女に自分は成ると、固く決意する。
しかしこのとき真唯は、まだ自分の可能性をよく理解していなかった。新庄によってその後のキャリアに一番恩恵を受けるのは、戸田ではなく自分だということを。
新庄が有楽町駅の方向に消えて行く。その後ろ姿を見送りながら、私は東急ストアに入った。新庄の後姿が消えると同時に、自分の一番可能性に満ちていた時代の映像も頭から追い払った。
最初のコメントを投稿しよう!