9人が本棚に入れています
本棚に追加
「君と話す時間は、後五分あるから、担当する仕事について話しておきたい。いいかな」
「はい」
最大の関心事について、満足のいく資料をもらったので、気が楽になって返事も軽やかに出てくる。
「最初は何も分からないだろうから、間宮さんの指示に従って仕事を進めて欲しい。間宮さんがもうアシスタントとして仕事ができると判断したら、担当する案件を決める。一応そのレベルに、長くても三週間で達して欲しい。アシスタントにかかる責任は軽いけど、働き次第によってはチームの効率が大きく変わる。来年の契約にも影響するから、がんばって働いてください。それから」
渡瀬は、そこで言葉を切って、真唯の目を見た。心の中を全て見通されるような、少し怖い視線だった。
「まだ、将来のキャリアなんて何も思い浮かばないと思うけど、できるだけ先輩たちの仕事内容をしっかり見て、自分なりの気づきを持って欲しい。それをするかしないかで、君の将来は大きく変わるし、今年の成果も変わって来る。仕事を依頼した人が言葉に出さない期待を、ちゃんとキャッチできるかは、仕事に取り組む日常的な姿勢次第だと、私は思っています」
真唯は渡瀬の言葉が、半分分かって半分分からなかった。特に自分なりの気づきがどういうことを指しているのか、さっぱり分からない。
「分かりました。自分なりに考えてやっていきます」
自分にしてはいい返事ができた。
「いいでしょう。ではこれからよろしくお願いします」
渡瀬の話が終わると、間宮が渡瀬チームのオフィスエリアに案内してくれた。
そこにはいろんな服装の人がいた。お洒落なスーツを着こなしている人がいれば、ジーンズにトレーナーというカジュアルな人もいる。中には部屋着でそのまま来たのではと思わせるジャージ姿の人もいた。
代理店という言葉の響きからハイセンスを想像していた真唯は、あまりのギャップの大きさに面食らってしまった。
「あの、すごいバラバラなんですね」
「えっ」
間宮は最初、真唯が何を指してバラバラと言ったのか分からずにいたが、真唯の視線がジャージ姿の男に釘付けに成ってるのを見て、ようやく言葉の意味を把握した。
最初のコメントを投稿しよう!