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「おそーい。もう帰っちゃおうかと思った!」
あ、いまのふてくされの表情はあざと過ぎたかなって自分で思う。意識しすぎた。
「悪い悪い」と言いながら顔をかき、目を背けながらわたしの前に立つ。
うわ。やっぱり。
これって……
気まずい空気の中、告白の答えを決めてなかったことを思い出す。
ちらりと彼の顔を盗み見ると、赤い顔が夕日のせいでより一層赤くなってる。わたしも耳とか首とか、赤いんだろうな。
あ。そうだ。
そういえばおでこも赤かったんだ。
今日、体育の授業中、どっかからボールが落ちてきて、おでこに直撃したんだ。けっこう痛かった。
跡になってたらどうしよう。
あー、顔が火照ってきた。
あついあつい。
ごまかすように前髪を触る。
「お、お、俺!実はさ!これ。書いたから!」
恥ずかしそうにしながら、わたしの前になにか差し出す。
手紙……だ。
青い封筒の。
直接告白されるのではと思っていたから意外だった。
もしかしたら、これ書いてたから遅くなったのかな。
「わ、わたしに……?」
「あ、うん」
「ありがとう……」
おそらくこのレターセット。この日のためにわざわざ用意したのだろう。そんな真剣に選んでる彼の姿を想像してしまい、いま、胸がときめいて、はぅ!ってなった。
受け取ったら、OKって訳じゃないよね。まだ読んでないし、そもそもこれがラブレターって決まったわけじゃないんだし。
おずおずと、その手紙に手を伸ばした。けれどその手紙に触れられず、空を掴む。
あれ?
見ると彼が手紙を引っ込めたのだ。
鳩が豆鉄砲くらったように、え?って言いかけてるわたしをよそに、彼は慌てて封筒から同じ色の便箋を取り出してる。
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