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「ご!ごめん。やっぱり、キミが読んで」
えーい。恥ずかしいけど!
国語の授業みたく緊張する。うわずった声で思い切って読む。
「つい先日、キミが笑顔で駆け寄ってきてくれた……」
「わー!声!なんで朗読?!」
「だって読めって」
「声出さないで読んで!恥ずかしいから!」
さっきは自分で読み始めたくせに。
わかったわよ。わたしもめちゃくちゃ恥ずかしいからよかったわ。
黙読すればいいんでしょ。黙読すれば。
もう。なんなのよこれ。
わたしが読んでるところを見てるのも恥ずかしいらしく、ソワソワしながら彼は窓を開ける。「はあー」って深いため息を外に吐きだしている。
わたしがどう感じながら読んでるか、わかんないんだから居た堪れないだろうな。
彼のドキドキが、わたしにも伝わってきて、あぁ、わかるなぁ、微妙なこの空気感。
校舎わきの桜は、あともう少しで満開になりそうだった。
さわさわと音を立てているのが、早く読めと急かしてるみたい。
わたしは再び、彼の書いた文字を追う。
『つい先日、キミが笑顔で駆け寄ってきてくれた。嬉しかった。たぶんキミはもう忘れてると思うけど。すっごくドキッとしたんだ。』
え?そんなこと、した?わたし。
ぜんぜん記憶にない。
『俺を通り過ぎて、後ろの友達に向かってゆくのを目で追いかけた。俺に向けた笑顔じゃないとわかって、ちょー恥ずかしかった!』
あー。あるある。
手を降ってた人に、振り返したら自分じゃなかった。みたいなね。
『その後、追いついた友達に不意打ちのひざカックンは危ないからやめておいた方がいいと思うよ』
う!見られてた!
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