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『俺がキミと初めて出会ったのは、たぶん、中一のとき。いや、中二のクラス替えのとき。いや違う。そうそうあれは、中三の修学旅行のときだ』
同中じゃねぇし!
高一だろー。初めて会ったの。
誰と勘違いしてんのよ。
『帰りのバスで「先生!気持ち悪い。降ります!」って言って、バス止めさせて、ひとりコンビニに駆け込んでトイレに引きこもったまま、ずっとみんな待たされた。すごく印象的だった。』
あああああ。
やめれー!
それ高一のオリエンテーションのときーー!
それは確かにわたしだ!それは忘れて!なんでそんなこと覚えてるのよ!
『その時俺は、いいなって思ったんだ。』
お、おう?
『ぼくらは二枚貝だ。ホタテ貝みたく』
?
『開けたら真珠が入ってる。』
お、おう……?
『君にあげよう。中の身はバター醤油がいいかな?』
ぶはっ。
バター醤油ってーー!
『刺身も捨てがたい』
なにを読まされてるのだ?わたしは。
『でも、やっぱりキミには真珠が似合う。真珠って、人魚の涙っていわれてるんだけど、バスの中で苦しそうに流すキミの涙がそれだ』
はー。変な汗がでる。
あつくなってきた。
『キミの直球ストレートは誰にも打ち返せない。』
お?
また変な例え。
『内角すれすれのストレートが、俺のツボを攻めてくる。ハートにどストライクなんだ。』
くあぁ。恥ずかしすぎて悶えてきた。
『そんな、直球ストレート勝負のキミ。』
お、おう……
『俺も見習って、勇気をだして伝えようって思ったんだ。気になって気になって、仕方がなかったんだ。』
そんなにわたしのこと……
鼓動が早まるのがわかる。
『キミがよく歌ってる曲。気持ちよさげに。サビのところあるじゃない?サビの頭の部分。あの「あしたもー」のキーはDなんだ。いつも音外してるよ。』
はううぅ。
聞かれてた!
そんな外してないと思ってたのに!
『でもそんなボール球にも俺は手を出しちゃう。いつも三振なのさ。』
うまい!
いや、うまいのか?
『それと「あしたも」は二番の歌詞で一番は「あしたへ」だよ。
だから気になって気になって……
胸の内に秘めておくべきことなのかもしれないけれど。』
胸の内に秘めとけよー!
ラブレターに書くか?ふつう!
そもそもなんなのよ!
これラブレター?!
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