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「先生のお弟子さんだから要君の作品を掲載するのでは無いんです。もちろん要君を立派に育て上げたのは先生のお力かもしれませんが…」
先生は煙草の吸殻が山となった机の上の灰皿で煙草を消されました。
「それは違うぞ…」
今度は先生が白井さんの方を向き、じっと白井さんの目を見ておられます。
「本来、編集者と言うのは、作家を育てるのも仕事だろう」
白井さんは少し仰け反った恰好で、苦虫を嚙み潰した様な表情をしておられます。
そして無言で二、三度頷かれました。
それを見て先生はにんまりと笑っておられました。
「要君が育ったのも、偏に君の力だな」
先生は白井さんの肩をポンポンと叩かれました。
「先生…」
白井さんは嬉しそうに微笑んで俯いておられます。
もしかすると涙を堪えられている様にも見えます。
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