始まり

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始まり

吉岡英夫、5歳。 ある日のコンビニで、彼は人生を変える出来事に遭遇する。 切っ掛けは父親。 英夫の目の前で父親が、 「チャリン」 と募金箱に小銭を入れた。心地好い音に、少年は訊ねる。 「今、何をしたの?」 「募金をしたのさ」 父親は財布の小銭を片付けるくらいの感覚でお金を入れたのに、ドヤ顔で返答する。 「募金?」 英夫は聞きなれない言葉に首を傾げる。 「そうだ。この箱にお金を入れると、そのお金で困っている人が救われるんだ。だからお父さんは募金したことにより英雄、ヒーローになったんだ」 「凄い!僕のお父さんはヒーローなんだ!」 興奮する息子を見て苦笑いをする父親。 「お、おう」 父親の恥じらいなど知らずに目を輝かせる少年は、 「僕もヒーローになりたい!」 と言って、小さな手のひらを翳した。父親は微笑み、その汚れを知らない小さな手に5円玉を委ねる。 「よし、募金箱にお金を入れてみろ。お前も今日からヒーローだ!」 「うん!」 この日から英夫はヒーローに憧れ、募金をし続けるようになった。
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