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体の調子は大丈夫ですか?
とても心配していました。
正直、いろんなことが手につかなくて。
でも、あなたが無事で良かったです。
本当に良かったと思います。
ん?外の景色が気になるのかな。
あなたが眠っている間に、
季節が何度も変わって、
すっかり秋になりましたね。
秋の匂いというか、独特な感じがしますね。
何年も時間はかかりましたが、
回復してなによりだと思います。
どうしたのですか?
じっとこちらを見て。
ああ、体型ですね、かなり痩せましたね。
ダイエットですよ、たまにはね。
どうして、目を半分閉じているのか、
あなたは気になるのですね。
眠たいわけではないですよ。
やっぱり気になりましたか。
私はため息を吐いて、渋々答えました。
とても言いにくいのですが、
実はあなたが眠っている間に、
目を悪くしてしまって、
あなたの顔は見えますが、
微かに表情や視線がわかるぐらいです。
少しずつ視力が悪くなって、
最初は老化の問題とか、
メガネをかけたらとか思って、
あれこれ工夫する日々が続きました。
それでも普通に行動していたのですが、
とうとう歩くことすら困難になって、
実は今日ここに来るのも、杖をついて、
看護師さんに連れられて来ました。
あなたが無事だということがわかったら、
もう十分です。
これ以上ないです。
目の不自由な人が側にいたら、
あなたの人生の迷惑になると思います。
だから、いい人を見つけて、
幸せに暮らしてくださいね。
今まで本当にありがとう。
さようなら。
どうしたの?急に起き上がったら危ないよ。
えっ、なんで泣いてるの?
大丈夫?
彼女は、真っ白なシーツを、固く握りながら、
私に見られないように、下を向いて、泣いていました。
しばらくして、顔を上げて、むりやり涙を飲み込むかのように、少し怒った口調で言いました。
「私は、あなたの杖の代わりになる、
ということは絶対に言いません。
私はあなたの視力が治るように医療の研究を始めます。長い間、眠っていたから、やりたいことと私がやらないといけないことが同時に見つかって、あなたには悪いけど嬉しいです。
これから不眠不休でやりますよ。
だから、あなたは研究のために必要なので、私の側から離れることはできません。
もし目が治らなければ、
その時は諦めてください。
一生、側にいてもらうことになります」
そう言い終えた彼女の顔を見ることは、
もう私にはできませんが、私は確信しました。
素敵な笑顔は見えなくてもわかるということを。
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