4話

3/4
47人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
Side:T  里帰りは思っていたより、あっという間に終わって。アパートに戻ってきた俺たちは、約二日ぶりに二人で夕食をとりながら話している。 「母さんたち、元気そうだし相変わらず仲良さそうでよかった」 「だよな。俺たちちょっと邪魔かなーとか思ったし。あ、でも兄貴は久々に母さんと話してるの見たけど、結構楽しそうじゃなかった?」 「あー、まぁね。でも、俺がっていうよりは、母さんが楽しそうだったな、って」 相変わらず一人で楽しそうに盛り上がっちゃってた、と兄貴が苦笑する。俺は今の母さんとあまり二人でしっかり話したことがないから、そうなのかーと思いつつ話を聞いていた。 「あ、そうだ竜也」 ふと、兄貴が思い出したように言った。 「お弁当のことだけど、本当にありがとう」 「ん? うん」 実は、大学が夏休みの間だけ、俺は兄貴に弁当を作っている。昼飯代が浮くし、兄貴は喜んでくれるし。そして、自分も生活リズムが崩れるのを防げるし、ということでやる事にしたのだ。まぁ弁当といっても、わざわざちゃんとした弁当箱は用意せず、保存容器に、有れば夕食の残りとか、簡単にできる卵焼きとかを詰めただけなんだけど。 「なんかさ、母さんにお弁当のこと話したら、母さん竜也のことすごくほめてたよ。えらいって」 「いや、そんな」 「で、こうも言ってた。お弁当毎日作るなんて、相手への愛がないと難しいものよ、って」 「へー……って、は!? あ、愛!?」 急に何を言い出すんだこの人はと思って兄貴の顔を思わず見れば、兄貴は少しだけ照れたように笑っている。そして、こう続けた。 「それ聞いて、びっくりしたけど俺、なんか嬉しくてさ。だって、春はあんな状態だったのに、兄弟愛がそこにあるのが他人から見てわかるくらいになったのかー、って」 「あ、あー……なるほどな、うん」 兄弟愛、と兄貴が言ってくれて、ホッとした反面、少しさみしいような。でも、急に俺の下心がバレたわけではないので、とりあえず今はよしとしておく。 「だから、本当にありがたいな、って。その、改めて、これからもよろしくね」 「うん、こちらこそ。よろしく、兄貴」 照れくさかったけど、きちんと返事をした。妙に改まってくれている兄貴に、今、自分もきちんと意思を示すべきだと思ったから。……ふと、俺は思い出した。 「そうだ、明日は俺、出来る限りの掃除しとくからさ、帰ってきたら色々チェックして教えて?」 「あ、そうだよね。じゃぁ任せる。ごめんね、なんか」 「いいって。テレビ届くの明後日かその次だっけ」 「うん」  今日の午前中。親が電器屋に行こうというので一緒に行ったら、なんとテレビを買ってくれる事になった。見たいものや大きさで相談して、結局、これで十分だからと、メーカー最新からひとつ型落ちのもので大きさは50型のがちょうどセール中だったのでそれにした。親は最新の55型を買ってくれようとしたけど、テレビ台も一緒に買う事だったり、今のアパートにどれくらい住むか分からないことを考えて、少し遠慮する事にしたのだった。 「ソファとテーブルは出来るだけ位置キープしようと思うけど」 「んー、そうだな……とりあえず、テレビ置ける場所を用意する感じで」 「了解」 こうして、思わぬ大きな収穫を得つつ、俺たちの里帰りは終わったのだった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!