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「 2章・3 」魔法のお勉強
神殿のお手伝いをしながらの魔法の勉強が始まりました。
「夜の魔法学校」
アグアニエベが迎えに来て、移動ドアで入った部屋。何人もの人が来ていたけど、親切な人ばかりだった。
教師のパトリシアは、小柄な丸顔の少女でスザンヌと同じ年だった。十代でお店をドルウ・ゴメスと共同経営している凄腕。
この学校も、2人で運営しているという話だ。
「そうなんでしゅか、あなたも男爵家?私もでちゅうー。」
舌ったらずの言葉が可愛いい。アグアニエベは低姿勢だったけど。
「お願いしますよ、パトリシアさん、素質はあると思うんですが、ハッキリしないんで。」
その通りに、授業が始まっても何も出来ない。スザンヌは、見てるだけだった。他の生徒たちは、何でもこなしていく。
(本当に、こんな事やれるの?)
今でも、自分に魔力があるとは信じられなかった。父親も母親も兄弟も、普通です。
明くる日、廊下を掃除していると大聖女のアンジェリカが通りかかって声をかけてくれた。
「どう、学校は?スザンヌちゃんは、お友達が出来たの?」
「まだ、出来てないけど。皆、いい人です。」
「無理にやらなくていいのよ。ゆっくりでいいから。」
「はい、頑張ります。」
大聖女様も、いい人なのよね。魔力で治療してくれたから、目眩もしなくなってる。病気が治るといいけど。
神殿の仕事で祭壇のお花を代えるのもやってます。両横にゴーレムが座ってるけど、私が行くと挨拶してくれる。他の人にはしないみたいだけど。
大聖女様は、時々、褒めてくれるの。何もしてないのに。
「スザンヌ、あなたのおかげよ。神殿の空気が、何時も綺麗だもの。魔物は入って来れないみたい。」
私が居るだけで、魔物が入れない?じゃ、魔除けみたい。
「そうね、そういう事かも。あなたは、魔除けの魔力を持っているの。」
魔除け?始めて言われました。大聖女が言うのだから、本当なんだろうけど。魔法とは違うと思うな。
もっと、戦闘力のある魔力ならいいのに。これじゃ、稼げないわ。ガッカリー!
アグアニエベが会いに来た。そして、一緒に来てほしいと言う。
「ジュリアン様が、ご病気でね。お見舞いに行きませんか?」
婚約者だったので、心配になる。年だから、大丈夫なのかしら。
アグアニエベの移動ドアで、お屋敷へ行った。執事が、凄く嬉しい顔をしたのにはスザンヌは驚く。そんなに親しくもしてないのに。
「おいでなさいませ、スザンヌお嬢様。ジュリアン様が、お会いしたいそうです。」
主の寝室へ初めて入る。そして、寝台で苦しそうな息をするジュリアンに挨拶をした。
「こんにちは、ジュリアン様。」
すると、骨骨の顔が目を開けて見る。スザンヌを見て涙を流すではないか。
「スザンヌ・・さん、会いた・・かった!」
皺だらけの腕が震えながら差しのべられると、スザンヌは可哀想になって手を握る。
バチバチ、バチッーー!
スザンヌの手の下で火花が弾ける。驚くスザンヌは、手を離した。
「きゃあー!」
見ていたアグアニエベが、部屋の中を見回して呟いた。
「我は、神の僕(しもべ)のアグアニエベである。その名において命じる。聖女に害を為すものは立ち去れ!」
寝室が、大きく揺らいだ。そして、静かになる。何が起こったのか分からない。寝台に寝ているジュリアンが咳き込んだ。執事が介抱した。
「大丈夫ですか、旦那様?」
「ゲホッ、ゲホゲホッー。」
心配気に見ていたスザンヌは、ジュリアンの口から何かが飛び出るのを目にする。それは、直ぐに消え去った。何なのだろう。
その後、ジュリアンは少しだけ元気になったのだ。何故か、スザンヌも回復薬を飲んだみたいに少し元気に。
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