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「 2章・7 」実戦します
パトリシア先生からの贈り物。それは、思ってもいなかった素晴らしい物だった。
「実はでしゅねえ、悪い呪術師を退治した時に手に入れたのがあるでしゅう。」
チーム「茹で玉子」が、パトリシアの率いるギルドチームの正式名だ。「茹で玉子」は、人々を苦しめていた呪術師と戦ったらしい。
「その時に、相手が分散化する術を使って逃げたでしゅう。その分散化した時の呪術を拾って保管ちてたの。その1つを差し上げるでちゅ。」
「えっ、いいんですか?」
「うん、使って欲しいでし。」
「他の人には、あげないの?」
「呪術師のだから。あなたなら、相性がいいと思うんでしゅ。嫌?」
「いいえっ、頂きますっ!」
パトリシア先生の好意、喜んでお受けします。
HP値ゼロに攻撃力値ゼロ防御力値標準という能力でしたが、呪術師の能力が加わって何とか形になりそうです。
「今日のダンジョン」
村の館に住み着いた幽霊の除去。
ギルドでのチーム顔合わせ。いかにも弱そうな人達がメンバーだった。内容からいって、エクソシストが居そうだったのに1人も居ません。
「聖女のスザンヌさんが前面で、俺たちはバックアップを。」
リーダーが今日の戦術を説明。何と、スザンヌに1人でやれというよな体制。女の子に1人でやらせていいのかとムカつく(報酬は均等)。
(私は、か弱い女の子だってば!プンー。)
初戦は魔法学校の仲間が居てくれて守ってくれたから良かった。今回の単独参加を後悔しても遅い。
「ここだ。スザンヌさん、入って!」
村の外れに建つ古い小さな館に到着。リーダーがスザンヌに指示。1人で入って来いは無いでしょう。
夜になると、館から出て来て村で暴れるという話だった。スザンヌは、怖くなる。
「あのね、ここは一緒が。きゃっ!」
皆で入ろうよと提案しようとしたら、強引に玄関の扉の中へ突き飛ばされてしまう。こいつら、最初から1人でやらせるつもりだったんだ。
スザンヌは、泣きたくなった。誇りだらけの床から涙をこらえて起き上がる。バトリシア先生の助けを呼ぼうか。
『ギブアップしても、いいでしゅう。その時は、呼ぶべしー!』
そう言って、小さなスイッチを手渡されていた。救難信号のような物らしい。まだ、何もやってないのに押すべきか迷う。
「君、大丈夫かい?」
人の声に驚いて飛び上がる。心臓がバクバクした。すると、窓も閉じられた暗い館の奥から誰かが歩いて来るではないか。
「嫌っ、化け物ー!」
「違う違う、人間だから。」
「へっ?」
「よく、見て。足もあるから。」
じっくりと眺めた。確かにブーツを履いた長い男の脚が2本。腰に剣を下げた銀色をした長い髪の若い男だった。
美人だ、画に描いたみたいに。闇の中に浮き上がる惹き付けられる容貌。スザンヌは、甘いマスクに見惚れてしまった。
「わー、女より綺麗そう。」
「そう、良かった。嫌われなくて。」
「はあ?あなた、何してるの。ここで。」
「うん、暇潰し。1人で居る時間が長くて。」
寂し気に長い睫毛を伏せる。スザンヌ、むず痒いよな変な気分。心臓のとこが。
ドキドキ・・・
ジッと見つめると、見つめ返された。やだ、目が離せない。接着剤で付けたみたいに。
「ねえ、いいの?」
「え、何が?」
「何がって、退治しに来たんじゃ。」
「あ、そうだ!」
思い出して、慌てて奥へと歩き出す。すると、男の手が腕を掴んだ。
「うわっー!」
出さなくてもいい声が出る。触って欲しくない、心臓がドキしてしまうから。のぼせそうだし。どうしたのかな、私。変なー。
「あ、ごめん。驚かせたかな。お化けは、寝てるみたいだよ。夜中にならないとね。」
ご丁寧に、ありがとうございます。これで、出て行く口実が出来たわ。喜んで玄関の扉へ走り出す。そして、振り返った。
「ねえ、あなたは?」
一緒に出ましょうよと言おうと思ったら、もう居ない。
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