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「 1章・7 」慣れない生活
今日で何日だろう、ここへ来て。婚約者の骨骨さんと毎晩のディナーやってるのは。
「ふぁぁ~~。」
骨骨さんはアクビをしたので、聞いてみた。スザンヌは話し相手に飢えている。世話をするメイドは口が固くて必要以上の会話をブロックしてるので。
「眠いんでござーますの、ジュリアン様?」
何故か、骨骨ジュリアンお爺さんはビクンッとした。もしかして、私が怖いとか。だったら、試しに言ってみよう。小声で。
「お行儀よくしないと、お仕置きするから!」
すると、また、ビクンッとする。本当は、聞こえてるのかしら。確認の試しに、もう1度トライ。
「私が怖いのね。言う事きかないと、ビシバシやるわよっと!」
ビクンッと、またまた反応。骨骨さんは、目をパチパチさせてスザンヌを見つめる。バレたな、これは。困ったなあ。
「スザンヌさん?」
「はい?(ヤバッ!)」
「今、呪文を使いました?」
「呪文?みたいな事でござーますた(バレっちゃったらマズッ!)。」
「そうですか。良かった、見込み以上です。ありがとうございます!」
「はあ?」
何の事だか、お礼を言われてしまいました。ビシバシやられて嬉しいとか?マゾーー、嫌だ、そんなのが婚約者だなんて。
骨骨さんは、今夜は3口も料理を召し上がり食事が終わると歩いて退場。何時もは、両脇から侍従に抱えられてるのに。
(へー、自分で歩けるんだ。年のせいと思ってたけど。)
骨骨さんが居なくなったので、スザンヌはデザートをお代わりして食べる。気を使うと食欲が無くなる。でも、今夜も完食しました。
自分の部屋に戻ったジュリアンは、召し使いに着替えさせられて寝台へ介添えされながら入る。そして、枕に頭を乗せると息をついた。
執事が来ると、微笑みながら言うのだ。
「彼女は、本物だね。」
「そのようです。」
「僕は、幸運だ。そう思わない?」
「はい、よく見つけられました。」
「町の中でスザンヌと出会った時に、神様の贈り物だと分かった。光り輝いていたから。」
「これから、お元気になられますよ。」
ジュリアンは、幸福な気持ちで目を閉じた。この屋敷にスザンヌが居るから大丈夫だと。
あの時、内緒で出かけたのは失敗だったが。物盗みに襲われたおかげでスザンヌと巡り会えたのだ。なんという幸せな事だろう。
その寝顔を見つめてハリスは、微笑む。元々は、ハリスの父親の執事として働いていたが、病弱だったジュリアンの世話をして独立して屋敷を持った時に付いて来たのだ。
幼い頃から寝てる事の多かったジュリアン。同じ年頃の子供のする事が出来ず学校にも通えなかった。
(このままでは、成人しても長生きできないと言われていたジュリアン様。これで、寿命が伸びそうです。スザンヌ様と神に感謝いたします。)
自分に感謝されてる事など知らないスザンヌは、部屋から抜け出していた。スザンヌの寝支度を手伝ったメイドは、部屋から出て1人になったからだ。
テラスから出て夜の暗い庭を寝間着で走る走る。運動不足解消にバタバタと跳び跳ねて走り回った。
「楽しいー。部屋にばっかり居るから身体がおかしくなりそうだもん。」
でも、変な感じ。走る度に足下で「グァッ」とか「ウゲッ」とか変な声が聞こえるよな。 ちょっと、ジャンプしてみよか。
「きゃっ、地面が揺れた?」
ユサユサと波打った気がしたのだけど、じっとしてると何も起こってない。気のせいかしら。
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