セピア色の虹

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セピア色の虹

父が倒れたと連絡があり すぐに 故郷へ帰ろうか と電話口で言おうとすると 少し入院するだけで そんなに大したことないから大丈夫 とのこと…… 仕事もあったし 状況だけ聞いて 今回は帰らないことにした 大学を卒業後 全国展開している旅行代理店に入社し 地方の支店に配属された そして 数年が経ち 後輩もできて それなりに昇進もして 給料も上がって 何不自由ない時を過ごしてきた 今日も 営業周りをして 職場へ戻っている途中 雨が降ってきて…… 「あー もう最悪……」 いつも鞄に入れている折り畳み傘も 今日に限って持っていない 数日前にも 同じような状況に合い 使ってそのまま 自宅に置きっぱなしだった まだ時間もあるし 少しカフェで雨が上がるのを待とう カフェで雨が止むのを待っている間も 私は営業書類に目を通していた 特別仕事が好きなわけでもないけど こうやって何かに没頭している方が 私は好き 学生時代も 勉強したり 本を読んだり 常になにかに集中していた 雨が小ぶりになってきて 陽の光が差してきた 会計を済ませ 外に出ると 隣にいた年配の女性が 「大きな虹ね 綺麗だわ」 ね?と私に微笑んでいて 少し霞がかった空には 一つ一つの色がわかるほどの美しい虹が出ていた 「ほんと……」 “空を見たのは 何時ぶりだろうか 顔を天に向けたのは 何時ぶりだろうか“ 「綺麗ですね」 私も微笑んだ
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