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「多分、『気余す』ってことだと思うんだよね」
「俺って、きあましてましたか?」
梅津さんは一瞬固まったが、すぐに笑い始めた。
「えっ、何ですか。そんなに変でした?」
「ごめんごめん」
梅津さんが目尻を右手の人差し指で拭う。よく見たら左手は腹をさすっている。
「発音が可笑しくって」
梅津さんが真面目な顔つきに戻った。
「きゃーましてっかは分がんねげど、『まるいち』は聞き慣れねぇがら、梅津さんもそう言ってしまったんでねぇかな」
ボソッと梅津さんが言う。
「都会の人って感じ」
「都会って。そんな」
俺が否定すると、梅津さんは首を横に振った。
「仙台も山形も都会だよ。米沢と比べれば、じゅうぶん」
梅津さんは、俺を通してどこか遠くを見つめているような気がした。
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