第二曲  夢 の 楽 土

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(僅か十八のこの娘が  “楽土”に暮らしたことは  幾年もないのか・・・) 管弦に鼓舞される 流浪の民のように こうして、己れを謳い鼓腹する 女子学生の歌声だから、 住み処があっても 心さ迷う大人は 足を停めずにおれなかったのだと、 男は己れに合点した。 誰からでもなくアンコール。 一際聴衆が多いこの日、 彼女の門出に、友人・後輩が 彼女とピアノを囲んで大合唱。 男は知らず知らずに 覚えてしまっていた『流浪の民』を 隣り合う見知らぬ者同士で 声を限りに歌っていた・・・。          ー 第二曲 幕 ー
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