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(僅か十八のこの娘が
“楽土”に暮らしたことは
幾年もないのか・・・)
管弦に鼓舞される
流浪の民のように
こうして、己れを謳い鼓腹する
女子学生の歌声だから、
住み処があっても
心さ迷う大人は
足を停めずにおれなかったのだと、
男は己れに合点した。
誰からでもなくアンコール。
一際聴衆が多いこの日、
彼女の門出に、友人・後輩が
彼女とピアノを囲んで大合唱。
男は知らず知らずに
覚えてしまっていた『流浪の民』を
隣り合う見知らぬ者同士で
声を限りに歌っていた・・・。
ー 第二曲 幕 ー
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