第六曲 六甲おろし

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教室から見える港を 背景に肩を寄せ合い… 安いオムライスとコーヒーが 御馳走だった夕暮れの学生街。 狭いアパートのアチコチに 毬江の物が一つ一つ増えた蜜月。 “探り合い”ながら 飽くことなく毬江を貪れば… 永遠に続くと思われた朝焼けが、 僕達のブランケット。  「卒業したら結婚しよう!」 堅く結んだ指を 涙で濡らしていた毬江。    でも・・・・・・・・・ 約束は叶わなかった。 あと一年で卒業出来たはずが 病身の父親が死んで 妹や弟達のために退学した毬江。 就職活動で東京の実家へ 戻ることの多かった僕。 東京で就職しても 時間の限りを努力した遠距離恋愛。 彼女を守りきれると 僕は信じていたけれど… 半年ほどして 毬江から来た手紙には   『思い出にしましょう』   ・・・・・・・・一行だけ。
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