第七曲 ムーン・リバー

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二時半になった。 時計は別の物に替わっていたが、 あの日の早穂子の寂しい笑顔の 後ろにあった位置はそのままだ。 本を閉じて、目を閉じた。 (今日でスッパリ忘れよう) …必死で自分に唱える…。 帰りには娘の好きな菓子を買い、 笑って「ただいま」を 言わなくては、娘の勇気に 申し訳が立たない。 そんなこと…考える耳に ピアノの音色が…、   懐かしの“ムーン・リバー”。 驚いて目を開けると…   開けると……!!  「ピアノの前にいた方に   お願いして弾いて戴きました」 ……穏やかな早穂子がいて 僕は…僕は人目もはばからず 五年分を抱きしめた。            ー 幕 ー
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