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   ある日、突然激しい頭痛に襲われ、闇にのまれた。  光が消え、音のない世界。  自分の手も足も見えない。立っているのか座っているのかさえ分からなかった。いつからここにいるのか。いつまでここにいるのか。    分からない。  暗闇の世界が俺の心を支配していく。  どのくらいの時間が経ったか分からない。永遠のような、一瞬のような。  ここを出る、という決意が絶望に変わる頃。    ようやく光が見えた。  ぼんやりとする視界に始めに飛び込んできたのは、白だった。    正確には白い天井。続いて知らない女の顔に、男の顔。  慌ただしく動く人たちの波間を縫ってやってきた一人の女性と少女。  もやのかかった頭の中に周りの音がBGMのように響いている。   女性と少女は泣きながら何かを言っていた。  俺は、女性の涙を拭おうとして、手が動かないことに気が付いた。手どころか足も動かない。辛うじて首は動かせるようだったけれど。  自分の身に何が起こったのか理解できたのは、  それから数日経ってからだった。
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