一から作り直す

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一から作り直す

ひなたをじっと見つめてしまっていた自分に気づく。 「あ? なんだ?」 「……ちゃんと話を聞いてよー。見惚れてないでさあ」 「あ、いや、俺はだなあ、」 「はいはい、いいからちゃんと聞きなさい!」 わかったわかった、大同が子どものようにため息を吐きながら佇まいを直すと、隣でひなたがぷっと吹き出した。 (お、ヒット?) 「でさ。どう思う? 僕たちの会社のイメージ。真反対過ぎてどうしよっかって感じでしょう」 羽多野の言葉を聞きながら、大同はコーヒーカップを手にした。 ひなたは書類を取り上げた。 「あのCM見てくれたんだよね? どう思った?」 羽多野が改めて訊いた。 「カッコイイなって思いました。スタイリッシュっていうか、綺麗にまとまってて、」 「でも、それだけって感じだったんでしょ?」 「……はい、」 机の上に書類を戻す。 「……あの、それより」 ひなたの顔が曇る。 「すみません」 ぽつり、と謝った。 一瞬、静寂に包まれ、慌てて羽多野が言う。 「え、なにがどうして、」 「お、おう、なんで謝んの?」 大同も。 「素人が偉そうに大企業のCMに口出ししちゃって、」 「いやあ、そんなことないない」 「それに……作り直すことになるなんて思わなかったから」 「それはだねえ、なんて言っていいかわかんないけど……まあいいや。こいつのせいにしちゃおう。なんでもかんでも大同のせいね。ひなたちゃんは全然悪くないから」 羽多野が苦笑いで立ち上がり、部屋の壁際に設置してあるカウンターへと向かう。コーヒーサーバーを取ると、ひなたのコーヒーカップにお代わりのコーヒーを注いだ。 「ありがとうございます」 作業をしている羽多野の代わりに、大同が話し始める。 「あのな。言ってもらって良かったんだよ。実はあのCM、社員には評判良くてさ。あれ、丸く収まってるってか、そこそこ上手に出来てるから」 「……はい」 「だから、オッケー出しちまったけど。『そこそこ』じゃあ、だめなんだよな。まあ俺もなんか物足りないって言うか、そういうのは感じてたんだけど、口にする勇気が出なくてな」 「いつもはずけずけ言う大同にしては珍しく、ね。こいつ、後からぶつくさと言うもんだからさあ」 「お前もあの大型ビジョンで見た時、首を捻ってただろ?」 「まあ、そうだけど……」 「そんなわけでな。次は、みんなに立ち止まって見てもらえるような、良いものを作りたい」 大同が芯のある声で言う。 「だから、ひなちゃんに協力してもらいたいんだ」
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