真白に沿う唇

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真白に沿う唇

「好きとか愛してるなんて言葉じゃ、また信じてもらえないかなって思って」 湯船に半身を沈め、そう言った大同の身体に、ひなたが背中をもたせかけて預けている。 もぞ、と身体を動かすと、入浴剤を入れて真っ白になった湯が、湯船の中でゆらりと波うった。 大型ビジョンの前で出会った二人は、そのまま大同のマンションへと来た。 握った手を引かれて、大人しくついてくるひなたが可愛くて、大同はエレベーターの中で、たまらなくなってキスをした。 「フライングだけど、勘弁な」 背中を腕で抱き締め支えながら、唇を合わせる。少しの間、ひなたの唇を貪るように堪能してから離す。ひなたの白い頬はほんのり色づいていた。 (……唇、柔らけえ) もう一度と重ねると、エレベーターのベルがリンと鳴って、ドアが開く。 「行こう」 どうしても急いてしまう気持ちを抑えて、ポケットからカギを取り出して鍵穴に入れる。ふるっと手が震えて、カギはなかなか入らなかった。 (はは、緊張で手が震えるなんて、ガキかよ) やっとのことでドアを開けて中に入ると、靴を脱ぐ前に直ぐに抱き合った。そして、そのまま抱き上げると、寝室へとひなたを運ぶ。靴があちこちに転がり、その乱れ方に欲望がせり上がる。 服を脱がす時、大同は優しく声を掛けた。 「このまま脱がしてっていいんか? やっぱ、見られるのは嫌か……?」 乳がんで乳房を切除しているのを知っているから、きっと大きな傷跡があるだろう、そう思ってボタンを外す指を止めた。 「大同さんが、嫌じゃないかな」 「俺は、平気だよ」 その言葉をオッケーの意と取り、直ぐにキスをして、止めていた指を動かした。 何もかもが、真っ白だ。 ひなたの肌も。そして、自分の頭の中も。 二人で抱き合い、真っ白になってから、大同はひなたを風呂へと誘った。 「わ、白いっ」 「入浴剤って言うとそれっぽいけど、まあ、あれだ。おっさん御用達の温泉の素だ」 あははと笑ってから二人で浴槽に入り、そして、ひなたを後ろから抱き締める。バシャっと音がして、湯船が揺れた。
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