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清々しく凛とした
「……ごちそうさまでした」
箸が二本、きちんと揃えてある。唐揚げに添えられていたキャベツの千切りでさえ、綺麗にさらえられ、皿の上には残っていない。
ご飯茶碗にも米粒一つ、ついていない。
(すっげー、綺麗に食ったなあ)
「おそまつさまでした」
大同はニコッと笑ってから、ウォーターサーバーへ水を取りにいった。グラスに八分目まで水を入れ、二つ手に持つと、席に戻ってから置いた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
グラスを持って、口をつける。唇に冷たい温度が伝わり、喉が潤される。唇が水滴で、しっとりと濡れた。
再度、目の前の皿を見る。綺麗になった皿と、揃えられた箸。
(気持ちのいいこって)
大同はそう思うと、自分のずれた箸をそっと指で直した。
「ねえ、今度さ。新しく作り直すCMも見てくれないかな?」
ここからはナンパナンパと思いながら、大同はスマホを取り出した。
「連絡先、教えてくれる?」
すると、ひなたは少し考える素振りを見せてから、カバンからスマホを取り出した。
「連絡先を教えるのはいいですが、CMの件は困ります」
「どうして?」
大同が画面をスライドさせる。
「私の一声で、作り直されても困るので」
真面目な顔でそう言ったのを見て、大同はぷっと吹き出してしまった。
「あはは、それはごめん」
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