ただただ、君だけを。

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ただただ、君だけを。

「なあ、教えてくれる?」 ひなたの枕元。 両腕を置いて、そこに頭をもたせかけた。 大同は、ゆっくりと訊いた。 「付き合ってる男、いるの?」 「ふふ、気になる?」 「そりゃあ気になるさ。で? いる?」 「はは……ううん、いないよ」 目を瞑る。瞑った目に、力を込める。 「じゃあさ、好きな男は?」 「それは……まあ、いるのかな」 「……そっ、か……念のため訊くけど。それって、俺、……じゃないよな?」 「……うん」 「はは、だよなあ。フラれてんのに俺、ダサすぎ」 「そんなこと……」 「でもいいんだ。俺は、好き」 「…………」 「片想いでもなんでも別にいい。ひなちゃんに他に好きなヤツがいたって構わない」 「大同さん、」 「匠さんって、呼んでよ。だめ?」 「だめじゃないけど……匠さん」 「なに、ひなちゃん?」 「本当は……匠さんのこと、」 「俺もっ、俺も愛してる」 「ふふ、まだなんにも言ってないのに。うん、そうだね。匠さんのこと、好きだよ」 「じゃあ、両想いだ」 「うん、」 「だから、生きてよ。お願いだ、死なないで」 「うん、」 「ひなちゃん、俺さ、君がいないと生きていけないんだ」 「…………」 「ひなちゃん、返事して」 「…………」 「ひなちゃん、目を開けてくれっ」 叫びながらがばっと起きる。夢から覚めて、大同は額にかいた汗を手の甲で拭った。 「あはは、すげえ汗……」 涙もついでに拭う。 「良い夢なのか悪い夢なのか……わっかんねえの見ちまった」 はは、と笑いながら、何度も頬を拭った。
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