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雨降る星
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遠い遠い昔
物語がそこかしこで息をする世界の森の中にある小さなお家のベッドの上で
物語を待つ小さな少女と
その傍らにある小さな木の椅子に座り
ランタンの柔らかな灯りに照らされたお母さんは雨音に似た声で物語を紡ぎます。
「私の可愛い小さな子、こんな秘密を知っている?」と歌うようにお母さん
「どんな、ひみつ?」
きらきらひっそりした声で少女
「雨はね星なのよ」と囁くようにお母さん
「雨がお星さまなの?どうして?」と小さな少女
「私の可愛い小さな鈴蘭、これは遠く深い深い森に棲む魔女と、空に昇る太陽と美しいお月様と、地と空に住まう全ての動物達しか知らない秘密なのだけどね」お母さんは小さく息を呑んでから大事な内緒話を続けます。
「雨と言うのは、その実あの水晶のように小さく小さく砕けて、細かくなって星としての生命を終わらせてしまった綺羅星達なの」とお母さん
この小さな少女は賢いので、何時か森の奥にある穴ぐらで見たキラキラ光って地面に不思議な色を描く綺麗な水晶を、お母さんがお祈りに使う粉にする為に小さく小さく砕いているところを、きちんと覚えていました
それを思い浮かべながら小さな少女は
「あの、とうめいな?」と訊ねます
「えぇ、そうよ」とウィンクをして跳ねる雨音に似た声でお母さんは答えます
「それなら落っこちてきたお星さまは、もうお空に戻れないの?」と悲しそうに小さな少女
「いいえ、それは違うわ」と小さな少女の頭を一撫でしてから、お母さんは続けます。
「砕けて雨になったお星様は地面に落ちて、皆が乾いてしまわないように、また砕けて全てを潤す役目を全うするの」
「それから?それから?」と弾むように小さな少女
「その役目を終えた綺羅星達は、空に昇る太陽からあたたかさを貰い、静かに愛しむお月様に優しく導かれて、またお空に還るの
そうして砕けた星達は一つになって新たなお星様として、また夜空を彩るのよ」と優しい笑顔でお母さんは言いました。
「じゃあ、またお星さまになれるのね!」と嬉しそうに小さな少女
「そうなの、だからね私の可愛い小さな鈴蘭」と少し悪戯な笑顔でお母さんが少女の頭を撫でながら言葉を続けます。
「雨をよく見てご覧なさい。皆は知らないけれども落ちてくる一粒一粒を、よくよく見たのなら、きっと雨が星の瞬きを宿している事に気付けるから、そこに綺羅星達の姿を見るから」とお母さんは細く穏やかに降る雨音に似た声で言いました。
さっきから少しずつ少しずつ瞼が重くなってきた少女は「次の雨はお星さまをさがすわ」と、うとうとしながら答えます
「えぇ、探してごらんなさい」とお母さん
「早く雨にならないかなぁ」小さな少女は、小さな声で言いました
「そうね、雨が来る日を待ちましょう。
その為にも、今日はもうお休みなさい
月と星と遊ぶ夢を見ましょう、ゆっくりとお眠りなさい」
額にお母さんの柔らかな口付けを受けた小さな少女は誘われるように小さな瞼を閉じて優しい夢へと入っていきました。
お母さんは少女の額へ、もう一度口付けをしてふっとランタンの灯りを吹消しました
「私の可愛い小さな星、貴方に雨と夜の祝福を。」
お話は、これにてお終い。
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